長期修繕計画は、建物を長く健全に保つための修繕の計画です。
賃貸住宅においても、建物の価値を下げないためには時期に応じてメンテナンスを行う必要があります。
また、空室リスクの小さい物件にするためにも適度な修繕は欠かせません。
長期修繕計画の必要性、木造アパートの修繕のタイミングとやること、長期修繕計画に基づく修繕方法を本記事で取り上げます。
目次
賃貸アパートの長期修繕計画とは
建物の経年劣化が予想されるタイミングに修繕工事を実施できるよう、必要な工事や費用をまとめたものです。
修繕積立金を決める参考になります。
長く賃貸経営を続けるためには、建物の質・価値を保つことが重要です。
よって、計画的な修繕工事は賃貸アパートでも欠かせないものと言えます。
賃貸でも修繕計画が必要な4つの理由
- 建物の価値を維持する
- 入居率の維持
- 事故防止
- 費用が足りずに修繕を断念しないようにする
建物の価値を維持する
経年に応じた修繕工事は、敷地内や共用設備などの定期的な清掃・修理、軽微な補修に加え、建物の資産価値を維持するのに欠かせません。
国土交通省は計画的な修繕の有無で利回り(不動産購入金額に対する1年間の利益率)のシミュレーションをしました。
木造の場合、表面利回りは修繕するより修繕しないで22年で建て替えた方が高いです。
しかし、社会情勢や人口の増減などの影響で一概には言えないものの、管理費などの経費を考慮した実質利回りを見ると、修繕した方が高いという結果になりました。
※表面利回り:年間家賃÷不動産購入費
※実質利回り:(年間家賃-経費)÷不動産購入費
入居率を維持する
必要な修繕を行うと、アパートの美観や設備の状態が長期にわたり保たれます。
入居者様に安心・快適に暮らせる環境を提供でき、長期的な入居や人気の物件となることを期待できます。
そして、安定した家賃収入につながります。
家賃収入を継続して得られると修繕費を積み立てしやすいです。
築年数の経った物件が時代のニーズにマッチするようリノベーションするなども検討しやすくなります。
事故防止
外壁や防水機能などは、見た目では分からなくても経年劣化は避けられません。
修繕しないと雨漏りや、外壁の剥がれで通行人をケガさせてしまうなどの恐れがあります。
建物の躯体の腐食で耐震性が低下すれば、最悪の事態を引き起こしかねません。
鉄さびでこけて人が死ぬと最悪刑に処せられる結果に。階段や基礎の鉄部は、錆びると穴が開くことがあります。
放置したままで負荷がかかると崩壊し、死亡事故に至るケースも。
費用が足りずに修繕を断念しないようにする
分譲マンションでは、修繕計画を立てて費用を貯めておく仕組みが一般的です。
ところが国土交通省のアンケートによると、賃貸アパートでは8割近くのオーナー様が計画を作成していません。
「資金的余裕がないから」という理由が多く挙げられました。
賃貸住宅で計画修繕をしないと、新築から10年経つと築古物件となります。
整備をしないと汚れや劣化が目立ってきて、入居率が悪くなって空室が増えます。
収入の確保が難しくなるとも言えます。
収入が減れば修繕費を貯めるのが難しくなります。
資金がないため修繕できず空室対策できないという悪循環に陥ってしまいます。
修繕の時期と内容
必要な修繕は下記の3つに分けられます。
- 毎年
- 新築~10年経過するまで
- 5~10年周期
必要な修繕とタイミングを毎年把握しておくと、資金が足りずに十分なメンテナンスができない事態を避けられます。
木造の新築住宅を例に、満室経営の土台となる物件価値の維持に欠かせない修繕の目安をまとめました。
建物の状況によって、本記事で紹介する頻度と前後する可能性があります。
メンテナンス上、毎年必要になること
内容 | 回数 |
---|---|
|
1年に1回 |
植栽剪定・除草 | 1年に1・2回 |
新築~10年経過するまでに必要になること
内容 | 回数 |
---|---|
消防点検 | 3年に1回 |
|
5年に1回 |
5~10年周期で必要になること
内容 | 修繕開始時期 |
---|---|
|
築5~10年 |
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築11~15年 |
|
築16~20年 |
|
築21~25年 |
|
築26~30年 |
修繕方法
大まかな流れは以下の通りです。
- 長期修繕計画書の作成
- 家賃収入の一部を積み立て
- 修繕実行
屋根や外壁などがどれくらいの頻度で修繕が必要か把握していると、修繕にかかる費用も見えてきます。
修繕内容によっては費用が高額になります。
計画的に積み立てていくことで、必要な修繕を漏れなく実施できます。
修繕の前には建物診断を行います。
建物の状況に応じて修繕内容・費用が決まります。
定期メンテナンスなどの際に劣化度合いや設備の不具合をチェックし、計画書を見直し・修正するのも大切です。
長期修繕計画は長く運用できる賃貸アパートの基礎になる
長期修繕計画は建物の状態を良く保つのに必要な修繕と費用を知るのに欠かせません。
誰でも簡単に作成できるものではないため、不動産会社や施工業者から提案を受けることもあるでしょう。
建物の維持は満室経営のポイントです。
修繕計画を把握し、計画的な会計管理を心がけましょう。
- この記事を書いた人
- 星脇 まなみ
- 2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
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