賃貸契約は、紙の書類を用いて対面で行うことが一般的でした。
しかし、宅地建物取引業法の改正で、不動産業界でもITの活用が進みそうです。
たとえば、電子化した書面が認められる、押印が不要になるなどです。
電子契約で変わりそうなことを、社会実験の結果を踏まえて考えます。
目次
賃貸契約でITを利用できるようにしたきっかけ
きっかけは、平成25年12月に策定された「IT利活用の裾野拡大のための規制制度改革集中アクションプラン」です。
見直し事項に、不動産取引が原則対面のみで行われることが挙げられました。
電子契約の実験の流れは以下の通りです。
書面も電子化する場合、IT重説に加えて対応が必要になります。
- 重要事項説明書などを電子化し、ファイルをお客様に送信
- IT重説実施前にファイルが改ざんされていないか確認
- 改ざんされていないことを確認できたファイルを使ってIT重説
これまで対面のみが認められていた状況から、まずは社会実験でトラブルがないかなどの検証が必要とされました。
賃貸契約に関するIT重説は、平成29年10月から運用されています。
電子契約は、令和4年5月までには本格運用されることになっています。
賃貸契約に関する社会実験について
下記は、IT重説の社会実験の流れとして国土交通省が提示したものです。
- 事業者とお客様がやり取りできるIT環境を整える
IT重説実施のための同意書なども用意 - 記名押印済みの重要事項説明書等を事前に送る
IT重説の同意、IT環境が整っていることも確認 - 重要事項説明書を確認できるか、接続に問題ないか、契約者本人かなどを確かめながら重要事項説明を行う
お客様に取引証の提示と確認できたことのチェックは必須! - お客様から重要事項説明書を送ってもらう
社会実験から見える電子契約導入のメリット
社会実験に参加した事業者の宅地建物取引士と借主様には、アンケートも実施されました。
実施した宅建士とお客様の意見は、電子契約の導入に前向きになれそうです。
宅地建物取引士のアンケート結果 | お客様のアンケート結果 |
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引用元:https://www.mlit.go.jp/common/001339493.pdf
アンケート結果から、以下が紙の書類にはないメリットと考えられます。
- 入居までがスピーディー
- 大切な書類を管理しやすくなる
紛失のリスクも減らせそうです。
- 契約内容を確認しやすい
宅建士の97.2%は、「電子書面の取り扱いに支障はなかった」と回答しています。
書面作成が容易だったという回答は77.1%。
オーナー様・お客様からの要望が多ければ、電子契約に移行する事業者も増えると考えられます。
借主様の8割以上は「電子書面の方が紙より理解しやすい」と回答しています。
書面の確認に支障はなかったという回答は94.3%です。
オンラインで契約まで完結できると、お客様からの満足度が高くなると予想されます。
電子契約の導入で懸念されること
宅地建物取引士が挙げたデメリット
- 紙より全体像を把握しにくい
- (閲覧・作成ともに)操作方法が分かりにくい
- 電子機器がないと閲覧・操作ができない
借主様は「特にない」の回答が最も多かったです。
ただし、下記のような声はありました。
- 操作方法が分かりにくい
- 紙より全体を把握しにくい
- 電子機器がないと閲覧できない
操作方法が分かりにくいツールだと、紙面の場合より契約完了までに時間がかかることが懸念されます。
インターネットに接続できないと、すぐに確認できません。
インターネット環境によっては、契約までの時間短縮が難しいかもしれません。
アンケートに協力したお客様の89.8%は、スマートフォンで書面を確認したと回答しています。
スマホでも書面の内容を理解できるフォーマットが求められそうです。
電子契約が一般的になることを期待します!
社会実験では、事業者もお客様も電子契約のメリットを感じていたようです。
しかし、課題もいくつか見つかりました。
本格的な活用が始まれば、新たなメリット・デメリットは出てくるかもしれません。
サービスの改良、オーナー様・借主様・事業者が使い方に慣れるなどで、電子契約が当たり前になるのではないでしょうか。
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- この記事を書いた人
- 星脇 まなみ
- 2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
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