居室のある階の床面積が一定以上の共同住宅は、2方向避難に注意して建物計画を作る必要があります。
2つ以上の避難経路について定めた法律は、建築基準法施行令です。
地上に出られるまでの経路、部屋から外へつながる階段までの距離などの根拠にもなっています。
消防法でも、入居者様が安全に避難できるためのはしごについての決まりを定めています。
共同住宅でどのように2つ以上の避難経路を確保するか、なぜ複数の避難経路が必要なのか解説します。
避難経路が1つにならないための注意点も、図解で紹介します。
2方向避難とは
居室の出入口などから2つ以上の異なる経路で地上に出られる経路のことです。
廊下・階段・バルコニーなどから地上に出られる経路を指します。
廊下・階段・バルコニー・スロープからの避難経路を確保できない場合、避難器具なども経路にできます。
例えば、弊社のシエスタヴィラ代田橋は、玄関からの他、窓側が避難経路として確保できます。
2階と3階は、避難はしごを居室内に設置しています。
上の建物とは異なりバルコニーがあり、隣の部屋と仕切り板などで仕切られていたら、仕切り板に下記を見やすく示すことが必要です。
- 避難経路であること
- 避難方法
- 避難を妨げないよう、仕切り板の近くに物を置かないこと
はしごなどの避難器具を設置する場合、工事届の提出と安全性の審査を受けなければなりません。
消防法で、点検の実施と結果報告書の提出も求められます。
消防法第17条3の3
第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(第八条の二の二第一項の防火対象物にあつては、消防用設備等又は特殊消防用設備等の機能)について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
2階以上の部屋から地上に避難できる直通階段を2つ以上設置する場合、階段に行くまでの通路で重なる部分が出てくるかもしれません。
階段までの通路で重なる部分は、部屋から階段までの距離の1/2を超えてはならないと建築基準法施行令第121条3で定められています。
例外は、部屋から重複区間を経ずに避難できるはしごなどがある場合です。
2つ以上の避難経路、なぜ必要?
根拠は建築基準法施行令第121条です。
建築基準法施行令第121条
建築物の避難階以外の階が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その階から避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設けなければならない。
建築基準法施行令第121条で2方向避難経路を設けなくてはならないとされる共同住宅の基準をまとめました。
- 住居用の階の床面積の合計が100平方メートルを超える
- 主要構造部が準耐火構造か不燃化でつくられた建築物の場合、200平方メートルを超える
共同住宅のように複数の人が住んだり集まったりする建築物で火災などが発生した時、避難経路が1つしかないと人が密集します。
人が殺到することで、ケガ・逃げ遅れなどのリスクが高まります。
亡くなる方が出る最悪の事態も想定されます。
多くの人の安全のために、複数の避難経路は重要です。
共同住宅以外だと、劇場、ホテル、病院などでも、条件に当てはまれば経路を確保しなければなりません。
平成13年に歌舞伎町のビルで発生した火災で、50人近くの死傷者が出てしまいました。
原因は、2方向避難経路が確保されていなかったから。
ビルは、2つ以上の避難経路が求められる用途で使用されるテナントが入っていました。
しかし、屋内階段1つのみだったため、多数の被害者が出たと考えられています。
事故を受け、建築基準法施行令の改正で、2方向避難を義務づける対象が広がりました。
2つ以上の避難経路を確保するための対策を図で解説!
管理会社は管理巡回の時、避難経路にもなる共用部分(廊下やバルコニーなど)に私物が置かれていないかチェックします。
当社建築のシエスタヴィラ代田橋エルプエブロを例に具体的にご説明します。
既に紹介した通り、1階の入居者様は窓側から避難できるようになっています。
外とつながる通路には扉があるので、扉の前に物が置かれていないか確認します。
扉の前がふさがれてしまうと、避難経路の1つがなくなってしまうため危険です。
歌舞伎町のビル火災は、屋内階段が避難経路の役目を果たせなかったとされています。
屋内階段に大量の可燃物が置かれていたために、延焼が広がったからです。
2方向避難経路は多くの人の安全につながる
共同住宅のような多くの人が集まる建築物は、2つ以上の経路で避難できることが求められます。
ただし、避難経路になる共用部分がふさがれると、いち早く建物の外に出るのが難しくなります。
廊下や、窓側に私物を置かないことを、入居者様に理解していただくことが大切です。
▼避難経路の通路を巡回で確認するお話はこちら
- この記事を書いた人
- 星脇 まなみ
- 2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
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