残置物処理モデル条項でできること~処理でトラブルにならないために~

賃貸経営をしていると、退去時に入居者様の私物が残され処理に困ることがあります。

しかし、無断で処分することはおすすめできません。物件内の私物を無断で処分した結果起きた訴訟もあります。

残置物処理モデル条項は、このようなトラブルの未然防止を期待されています。

また、単身のご高齢の方の部屋探しの大変さの解消にもつながりそうです。

本記事では残置物が想定されるケース、残置物処理モデル条項でできること・できないことなどを解説します。

残置物が発生する場合はどのような時?

賃貸借契約中に部屋を借りている方が亡くなった時に相続人の有無や所在が分からない、相続人と連絡がとれない、などの時です。

 

上記が発生すると残置物(物件内に残された私物など)の処理が難しくなります。

単身の高齢(60歳以上)の方だと、残置物の処理の問題が起こるリスクが高く、部屋を貸すのを躊躇するオーナー様は少なくありません。

残置物処理の問題が起こりにくくなれば、単身の高齢の方も部屋を見つけやすくなると期待されています。

家賃滞納された場合にしてはいけないこと

  • 鍵を勝手に付け替える
  • 中のものを勝手に捨ててしまう など

 

賃貸借契約書に「賃借人が賃料の支払いを怠った時、賃貸人は賃貸物件の施錠をできる」「動産(残置物のこと)を処分しても、賃借人は異議を申し出ないことを確約する」などの記載があっても、記載内容が民法90条や借地借家法30条で無効となる可能性があります。

鍵の付け替えや部屋の中のものを処分すると、損害賠償請求や刑事罰に問われることも。

 

上記の特約が民法の自力救済禁止の原則に違反しているためです。

自力救済禁止の原則とは、権利を侵害される状態が続いても、裁判所を通さずに自分で解決することはできないことです。

 

国土交通省は滞納を巡るトラブルについてまとめています。資料によると、下記のような対処をした結果、訴訟に発展しています。

 

  • 深夜・未明の取り立て
  • 不在時の無断侵入
  • 強制退去
  • ドアノブに金属製のカバーをつけるなど部屋を使用できないようにする

など

モデル条項解説

モデル条項の目的は、部屋を借りている単身の60歳以上の方が亡くなった時に、残置物をスムーズに処理できるようにし、オーナー様の不安を和らげることです。

入居者様の保証人に処理を依頼できるなど、オーナー様の不安が生じにくいと思われる時には、モデル条項を適用できない可能性があります。

根拠は民法第90条・消費者契約法第10条です。

ただし、個人で事情は異なるため、最終的には裁判所の判断となります。

 

モデル条項に則りできること

入居者が亡くなったことを賃貸借契約の終了条件として下記を実施します。

  • 非指定残置物は廃棄か換価
  • 指定残置物は指定された送付先に送る※指示がある場合は換価や廃棄の実施
  • 換価で得た金銭と敷地内に残された金銭を相続人に返還

 

入居者様が亡くなって3ヶ月経過し、賃貸借契約が終了した場合、保管に適さない非指定残置物は廃棄できます。

可能な限り換金することが求められます。

 

非指定残置物とは

  • 金銭でない
  • 入居者が亡くなった時点で所有していた
  • 居室・敷地内に残されたもの

 

入居者の部屋の中になくても賃貸物件のある敷地内に残されている可能性のあるものも想定されています。たとえば駐輪場内の自転車などです。

 

廃棄・換金のために残置物を物件の外に持ち出す際は、オーナーや管理会社など第三者立ち会いの下、残置物の状況確認・記録が必要です。

指定残置物とは

  • 指定された送付先に送る必要のある残置物
  • 入居者が亡くなった時点で居室・敷地内に残された金銭以外のもので、指定残置物リストに記載するなど廃棄してはならないと指定されたもの

 

※リストの作成は必須ではありません。指定残置物であることと送付先の分かるシールの貼り付けなども認められます。

廃棄してはいけない残置物

  • 入居者様自身の所有物で廃棄を希望していない
  • 入居者以外の方が所有するもの

 

残置物の廃棄などを行うのは誰?

受任者です。

受任者は、入居者が亡くなった場合代理で賃貸借契約の解除ができます。

亡くなってから一定期間が経って賃貸借契約が終了したら、残置物の廃棄・換価などが求められます。

 

受任者となれるのは入居者の推定相続人です。推定相続人を受任者にするのが難しい場合は、居住支援法人や管理会社になります。

 

オーナー様は入居者が亡くなったことが分かったらすぐに受任者に通知が必要です。

受任者が物件に入るために解錠を求められることもあります。

残置物をすぐに撤去するのはNG!

残置物処理モデル条項は、オーナー様が単身のご高齢の方の入居を容易にするために定められました。

一定期間を空けて手順を踏むことで、入居者様が指定したもの以外は居室から出しても良くなります。

残置物によるリスクが小さいと判断されたら条項は無効です。

60歳以上の単身の方が入居する時には特に、残置物の扱いを入念に確認しておくと安心です。

この記事を書いた人
星脇 まなみ
2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
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