東京都は、火災による被害を防ぐため、木造住宅密集地域の解消に取り組んでいます。
特に対策の必要な地域は「不燃化特区」に指定し、建替え・除却費用を助成することで、不燃化を進めています。
たとえば、台東区谷中2・3・5丁目地区は、平成26年4月1日、東京都から不燃化特区に指定されました。
指定を受け、住宅の建替えなどを対象に、助成制度がつくられました。
そこで、台東区谷中2・3・5丁目地区の助成制度について本記事で取り上げます。
助成対象の工事について
令和7年度末まで、下記の工事の助成を受けられます。
- 建替え
- 除却
助成条件をそれぞれご説明します。
建替え
下記が対象者です。
- 自己が所有する耐用年数2/3を超えた建築物を除却し、5年以内に下記を満たす共同住宅を建てる方
- 二親等以内の親族が所有する建築物
- 耐火建築物、または、準耐火建築物
- 自己または二親等以内の親族が所有する共同住宅
- 狭あい道路の整備に協力する
- 敷地面積が原則100平方メートル以上
- 1戸あたりの住戸面積25平方メートル以上
- 周辺の環境に配慮したデザイン など
耐用年数は、通常使用で住宅などを使い続けられる期間のことです。
減価償却資産の耐用年数等に関する省令で定められています。
建築物の構造や用途で、年数は異なります。
たとえば、同じ構造の住宅と工場を比較すると、工場の方が耐用年数は短いです。
構造 | 耐用年数 |
---|---|
木造モルタル造 | 20年 |
木造 | 22年 |
鉄骨造(骨格材の肉厚3メートル以下) | 19年 |
鉄骨造(骨格材の肉厚3メートル超4メートル以下) | 27年 |
鉄骨造(骨格材の肉厚4メートル超) | 34年 |
れんが造 | 38年 |
石造 | |
ブロック造 | |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
耐用年数の2/3は、たとえば木造住宅なら15年、鉄筋コンクリート造なら32年になります。
耐火建築物は、火災で火が広がらないために必要な性能と、鎮火までの間、建物が倒壊しないことまで求められた建築物です。
主要構造部(壁、柱、はり、床、屋根、階段)に耐火性能のある材質が使われます。
準耐火建築物は、主要構造部に耐火性能のある材質が使われ、火災で火が広がらないことが求められるのは耐火建築物と共通です。
しかし、鎮火するまでに建物が倒壊しないことまでは考慮されていません。
▼準耐火建築物について詳しくはこちら
狭あい道路は、主に幅員4メートル未満の狭い私道を指します。
整備方法にセットバックがあります。
セットバックとは、将来的に道幅を広げることを想定し、建築物を後退させて建てることです。
道が狭いと、災害時の避難や緊急車両の通行に支障をきたします。
建築確認や不動産取引でも、狭あい道路のトラブルは少なくありません。
街の安全確保などのために、狭あい道路の整備は重要と考えられています。
戸建て住宅への建替えにも利用できますが、共同住宅と条件は異なります。
除却
下記が対象です。
- 自己が所有する以下に当てはまる建築物を除却し、耐火建築物を建てられるなど、延焼防止に役立つ空地にする方
- 二親等以内の親族が所有する物件
- 耐用年数の2/3を超える
- 区の調査で危険と認められ、適切に管理されていない など
助成金額
建替え | 除却 |
---|---|
建築設計費と工事管理費の45/100 | 解体除却工事費と除却後の敷地の整備費用 |
上限はどちらも150万円です。
手続きの流れ
- 地域整備第3課に事前相談
- 建替え・除却などのスケジュールと基本計画を立てる
建築士・弁護士などの専門家と相談しながら決めます。
専門家の方を区から派遣してもらうこともできます。 - 承認申請書の提出
除却後に建替えする方は、申請書の準備とあわせて、建築確認申請の準備もしてください。 - 承認通知書の受け取り
- 工事に着手し、着手報告書を提出
- 工事完了後、完了報告書、助成金交付申請書、誓約書を提出
建替えの場合、完了報告の前に建築確認申請が必要です。 - 助成金交付決定通知書の受け取り
- 助成金交付請求書の提出
- 助成金の受け取り
承認申請・助成は、工事着手後はできません。
必ず着手前に申請し、区から承認を受けてから始めてください。
台東区は、工事に着手する1ヶ月前までの申請を推奨しています。
申請に必要な書類は、区の窓口でもらえます。
建築士など専門家の派遣について
助成対象の建築物の所有者は、建築士・弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーなどを無料で派遣してもらえます。
建築計画、税金、資金計画などを相談できます。
相談時間の目安は、1回2時間ほど。
1年間に5回まで利用できます。
ただし、相談するたびに申請が必要です。
以下が、申請から相談までの流れです。
- 専門家派遣申請
申請には下記が必要です。- 専門家派遣申請書
- 登記全部事項証明書
- 相談内容の分かる書類
- 委任状※必要な場合のみ
- 審査
審査に通過すると、派遣対象確認通知書が発行されます。 - 派遣決定
区から相談に応じてくれる専門家の案内があります。 - 相談日時・場所の調整
専門家の方から連絡してもらえます。 - 相談
審査から派遣が決まるまで、3週間ほどかかります。
区から派遣された専門家に相談しながら工事の計画を立てたい方は、早めに区への相談と派遣申請をおすすめします。
早めに区と専門家の方への相談ができれば、工事開始までに余裕をもって交付金の承認申請まで終えられます。
不燃化特区の建て替えで助成金を取得
台東区は、不燃化特区にある建築物の建替えや除却で助成金をもらえます。
所有する物件が耐火建築物・準耐火建築物ではない、建ててから何十年も経過しているなどであれば、対策をおすすめします。
助成金の受け取りは、申請が必要です。
工事を始める前に必ず区に相談し、早めに申請を済ませましょう。
▼オーナーさんに役立つ補助金情報を他にも記事にしています
- この記事を書いた人
- 星脇 まなみ
- 2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
- 「運用する」カテゴリの最新記事