「建築基準法」何のための改正?3視点で解説します

建築物を建てる、そして維持するために守るべきルールがあります。その名も「建築基準法」です。

最初に「建築基準法」が発令されたのは1950年。その後時代の変化や技術の進化によりたびたび法改正されてきました。

直近で大きく改正されたのは2019年6月。その改正の背景にある狙いを「木材活用」「安全確保」「ストック活用」の3つに分けて解説します。

「何のため」の改正かが分かれば、現行の「建築基準法」に対する理解が更に深まります。

木材利用の推進

一つ目は木材建築を巡る多様なニーズへの対応です。

木材利用ニーズの拡大への対応するため、安全性を担保しつつ設計の自由度を高めました。

具体的には以下3点があげられます。

高さ16m以下、3階建て以下の木造建築物は原則として耐火構造の対象外としました。

16m超、4階建て以上でも新たな準耐火構造を設けて木材を見せる意匠を実現できる様になりました。

③消火までに倒壊しない防火性能を満たす事が条件に、壁や柱などの主要構造部で木材を厚くすれば石膏ボードなどで覆わなくてもよくなりました。

 

次の各号のいずれかに該当する建築物…は、その主要構造部を通常火災終了時間…が経過するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために主要構造部に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

ただし、その周囲に延焼防止上有効な空地で政令で定める技術的基準に適合するものを有する建築物については、この限りでない。

一 地階を除く階数が四以上である建築物

二 高さが十六メートルを超える建築物

三 別表第一(い)欄(五)項又は(六)項に掲げる用途に供する特殊建築物で、高さが十三メートルを超えるもの ….

(建築基準法第21条より)

国内の森林は約4割がスギやヒノキなどの人口林であり、現在その大部分が利用時期を迎え木材利用が推進されています。この法改正によって、これまでの木材の活用が少なかった用途や規模の建築物が木造・木質化されて注目を集めています。

空き家活用の推進

二つ目は空き家の活用推進です。

空き家の総数はこの20年で1.8倍に増加しており、過去最大となっています。原因の一つは「親の家を相続したがどうしたらいいか分からない」と言った利活用の問題です。

しかし一般の住宅を飲食店や宿泊施設に用途変更にする場合、大規模な改修が必要とされる事が多く転用に制限がありました。

そこで、戸建て住宅の空き家を福祉施設・商業施設などに転用する際の手続きや改修の規定軽減がされました。

(3)戸建住宅等を他用途に転用する場合の規制の合理化

耐火建築物等としなければならない3階建の商業施設、宿泊施設、福祉施設等について、200㎡未満の場合は、必要な措置を講じることで耐火建築物等とすることを不要とする。また、200㎡以下の建築物の他用途への転用は、建築確認手続きを不要とする。

(建築基準法の一部を改正する法律、平成30年法律第67号より)

これにより、3階建で200㎡未満の建物ならば壁や柱を耐火構造にする改修は不要となりました。

対象の物件を購入して賃貸物件等にしたいオーナーの方にもメリットになります。

市街地・建築物の不燃化

三つ目は建築物・市街地の安全性の確保です。

糸魚川市大規模火災では、約6割が準防火地域指定以前に建てられた非防火構造の建築物でした。これが被害拡大の要因とされています。

そこで、適切なメンテナンスや改修により既存建築物の安全性の確保を図り、火災に弱い密集市街地を解消する改正が行われました。

第53条 建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合(以下「建蔽率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を超えてはならない。中略

建築物の敷地が前項の規定による建築物の建蔽率に関する制限を受ける地域又は区域の二以上にわたる場合においては、当該建築物の建ぺい率は、同項の規定による当該各地域又は区域内の建築物の建ぺい率の限度にその敷地の当該地域又は区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下でなければならない。 中略 一 防火地域(第一項第二号から第四号までの規定により建蔽率の限度が十分の八とされている地域を除く。)内にあるイに該当する建築物又は準防火地域内にあるイ若しくはロのいずれかに該当する建築物 以下略

(建築基準法 第53条より)

建ぺい率とは敷地面積に対する建築割合です。

準防火地域に準耐火建築物のアパートを一棟建てる場合これまでより建ぺい率が10%増加する事になりました。

より広く多くの部屋数を求める賃貸物件のオーナーの方にとってもメリットになります。

資源が活用され安全性が高まるとともに社会的価値が生まれる

「建築基準法」がネックとなり建築物の安全性が確保できなかったり、限られた資源である土地・空き家が放置されているのがここ最近の現状でした。しかし今回の改正で資源がもっと活用され私たちの暮らしの安全性も高まっていくことでしょう。

またオーナー様にとっても有利な改正点が複数ありま。今まで持て余していた空き地や、用途に困っていた建築物を新たに運用する事で、社会的価値を生み出す事が出来ます。

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この記事を書いた人
北川 まな
娯楽雑誌編集部を経て現在はフリーランスWEBライター。 育児をしながらイベントMCとライターの二足のわらじを履いて活動しています。 子どもの頃から本を読むのが好き、今でも活字を読むことが生活の一部、同時に自分でも文章を書くのが好き。とにかく活字が好きです。 MC、リポーターに経験を活かしてインタビュー記事と取材記事が特技。 「企画・取材・執筆」などを複数のメディアで行っています。
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