オーナーや管理会社が入居予定者の入居前に一度室内に入って確認作業をしていることは一般にあまり知られていない事実です。
入居者が入る前の最終段階として点検をすることを入居前チェックと言います。
今回は入居者が住む前の最終確認、入居前チェックとはなにか?物件価値を下げずに賃貸管理をするための考え方をご紹介します。
日頃から清掃業者とのやり取りに難儀している私たちは賃貸物件の清掃をしている方へ聞きまわって清掃が汚いのに完了としてしまう理由を見つけました。
清掃業者の依頼が上手くいかず試行錯誤するすべての方へ書きました。
目次
入居前チェックとは?
賃貸住宅の管理をする側が、入居者が入る前の最終段階としてお部屋を整えるための点検のことを入居前チェックと言います。
基本的には、インターホンやエアコンなど電気系の動作確認と清掃確認を行います。
入居者退去後から次の入居者が決定するまでには下記のように入居者募集が行われます。
【退去~入居者募集の流れ】
①入居者退去
②原状回復工事:壁紙、傷の補修
③清掃(ルームクリーニング)
④内見:次の入居者探し
⑤次の入居者決定
⑥入居前チェック
⑦入居
③の清掃で一旦お部屋はきれいになりますが、次の入居者が確定する前の内見で複数人の立ち入りがあります。この内見の立ち入りの際に、お部屋がだんだんと汚れていきます。
空室期間が長期であればあるほどお部屋は汚れる傾向にあります。
原状回復、清掃業者による退去後クリーニングの実際
先述の清掃(クリーニング)ですが、このクリーニングは会社によって仕上がりが本当にまちまちです。
依頼した当初はきれいに掃除をしていたところがだんだん汚くなり、清掃残しや補修忘れをする会社が残念ですが存在します。
物件によっては掃除をしていないのかというレベルで清掃後の部屋が汚いところもあります。
▼シャワールームの清掃後写真より(この黒い線は毛髪。黒い粒は模様ではありません)
当社では、このクリーニングの不備を補うため入居前チェックの際に再清掃を行うこともあります。
オーナーさんにも、頼んでいる管理会社がクリーニング不備をきちんと見ていなかったために、自分で清掃をするようになった方もいるそうです。
退去後の清掃はどのように行われる?
退去後の清掃は、下記のように3通りに分かれます。
①管理会社が清掃会社に依頼をする場合
②オーナー自ら行う場合
③管理会社の中に清掃部があり内製している場合
③の形態のある管理会社では、主に築古の物件をメインで扱っていました。清掃部では、社員1人、パートさん1人、原状回復技術を持つ人1人の計3人態勢で組まれていました。
入居前チェックはどの管理会社でも行う?
特に新築、築浅物件は入居予定者のきれいさへの期待値が高いためきれいな状態で引き渡すことが入居後のクレームを防ぐためには重要です。
築古物件では、新築当時のままという訳にはいきませんので日やけや変色などある程度は納得の上というのが暗黙のルールです。
電気系統に不具合はないか等、点検だけを入居前チェックとして行う管理会社もあり、それぞれの管理会社の考え方によって入居前の部屋の状態には違いがあります。
入居前のお部屋の状態に気を配る方針の管理会社では、清掃の確認も行われます。
入居前の清掃のレベルが高いと評判のハウスメーカー系管理会社の清掃をしている方にお話を聞きました。
チェックがついているのに清掃に不備があった場合、対策書を書かないといけないんです。とても神経を使います。
清掃に不備があることが判明するということはチェックをする人がいることになります。
質の高い清掃を支える財源はどこからくるのか?
どこからその財源が出てくるのかと思い募集条件を見てみました。
上でインタビューをした管理会社の物件では、退去時のクリーニング費用が高めに設定されていました。
入居者がクリーニング費用を負担するしくみになっていることが想像できます。
この費用は高額なのかネットで相場を検索してみると、特別高いわけではなく国土交通省のガイドラインに則った価格となっていました。
清掃の質が良くないのはなぜ?
正直に言います。私たちも、清掃会社の清掃の質に悩み試行錯誤をしている最中です。
本当はきちんと掃除をする会社に依頼したいのですがなかなか見つからず、清掃業者を変えたり再清掃を自分たちでやらざるを得ないという状況にあります。
今まで様々な会社を試してみましたが、多くの会社は商談後1回目はきれいに清掃が行われるけれど、2回目からは清掃の質が目に見えるほど落ちていきます。清掃漏れを指摘すると、仕事を受注しなくなります。
どこの会社に依頼しても同じような結末になる。なぜなのか?その理由を探りました。
理由①下請け構造
商談をした清掃会社業者も別の業者に委託をしていることがあったのです。
この多重下請け構造により受注側は数をこなさないと利益が上がらない構造の中にいることになります。
チェックしてやり直すという作業も多くの会社は実践できない。工期がかかるうえに儲けになりにくい世界です。
後述でも出てきますが、営業さんに清掃チェックリストを渡しても完遂されない理由は利益のために受注するが実際の作業者ができるかと言えばそうではないというところにあるのかもしれません。
私たちは清掃費用が高めの業者さんに頼んだことがないのでこの構造にいない会社もいるかもしれません。が、多くの管理会社と清掃会社はこのような関係に心当たりがあるはずです。
業界がこうだから管理会社の私たちがあきらめるでは、オーナー様の資産にマイナスにしかなりません。
この状況で綺麗に仕事をしてくれる時の違いは、「人」。きちんとやる人を見つけていくことしかありません。
理由②作業者へのリスト共有ができていない
仕事を受けてくる営業と清掃作業者は基本的に異なります。
清掃作業者は入れ替わりが激しいです。
理由①の構造になっていない会社でも、作業者へのリスト共有がきちんと行われていなければチェックリストに載っている項目の清掃はできないことが考えられます。
理由③汚いのが普通と思っている人がいる
清掃作業者さんから「ここまで自分はやったのだから清掃したことになる」と言われたことがあります。
退去当時の荒れた状態と比べると確かに綺麗になっているのですが、入居後にクレームが来ない綺麗さかと言われると話は違ってきます。
清掃チェックリスト
清掃をきちんとやってくれる会社に頼みたい。
そこで管理部で作成が進んでいたのが「清掃チェックリスト」。作成したのは、当時仲介部兼管理部だった田口さんです。
完成した本品がこちら。
※合計5ページの内の一部
清掃チェックリスト制作の経緯
制作者の田口さんにインタビューをしながら制作の経緯を聞きました。
何度清掃会社を変えても清掃がきれいにならない状況で困っていました。どうにか解決しようと商談に来た清掃業者の担当者に渡すために清掃をやってほしいところをリストにすることになりました。
【制作ポイント】
①文字だけではなく写真で表現
②こちらが当たり前だと思っていることも全て掲載
コロナウイルス直撃、実際にリストを活用してみた
このチェックリストが制作されたのは4年前です。
このチェックリストが別の用途で活躍するときがきました。コロナウイルスの影響で2人ほどかけてしまったのです。
お休みになるのはこのご時世しょうがない。お休みをどうやって皆でフォローしていくかが問題です。
リーシング担当の栗本さんが決めてくれた入居者を迎えるために皆で手分けして入居前チェックに取り掛かりました。
人が足りないからと適当に仕事をしてはいけません。これまでと同じ質でチェックを行うために、行動します。田口さんがつくってくれた入居前チェックシートをお守りに新築、シエスタデュオ一橋学園の入居前チェックへ向かいました。
シエスタデュオ一橋学園west棟 2階のある部屋の入居前チェックをしたのは私坂口と、リーシング部の栗本さんです。
2人で片手にチェックシートを携えながら掃除をします。
▼その副産物として完成したのがこの記事でした。
最後にカレーを置いて完成。
▼カレーを置いた理由はコチラの記事へ
ちなみに1階のある部屋の入居前チェックを行ったのは社長です。当社は緊急時、社長も自ら動くような会社です。
初めて入居前チェックをしっかり行う2人だったので入居後のお客様から何か言われやしないか内心不安でした。
しかし、その後問題なく入居されたようで安心です。
初めて入居前チェックシートを活用してお掃除をしましたが、実際に使ってみてこのマニュアルがあれば同じ質で入居前チェックを行うことができることが証明されました。
清掃をきちんとしておくのは物件の維持管理のため
初期は私たちも退去後の清掃を元からここまで高くしようとは考えていませんでした。
高くなっていったのにはオーナー様の資産である物件を維持管理していくための理由があります。
理由①クレームになるから
シエスタシリーズは現状築浅のため汚れが目立ちます。
入居者も築浅=きれいという印象を持って入居をするため少しの傷や汚れがクレームになりやすいです。
理由②汚いまま放置をすると堆積された汚れを落とすのに費用と労力を要するから
例えば、洗濯槽のカビはそのまま放置していると簡単に落とせない頑固なカビに変わり修理にお金と時間がかかります。
初期段階では落とせたはずの汚れが堆積することで通常の清掃では落とせない頑固な汚れに変わってしまいます。
その頑固な汚れを落とすには時間と費用がかかります。
維持管理を考えると取れる汚れは取れるうちに処理をしておいた方がいいのです。
家賃に見合わず汚れた家には誰も住もうとは思いません。
一定の質でサービスを提供できるように
●●さんに任せておかないとやっぱりだめだ。大手じゃないから質が悪い。そう思わせるのではなく、会社として同じ質でオーナー様へサービスを提供できるように誇りをもって仕事をやりたいと思っています。
汚いまま引き渡すとさらに汚く使われてしまいます。汚く使われると結果的に修繕に時間とお金がかかります。管理する私たちにもオーナーさんにも良いことではありません。
- この記事を書いた人
- 賃貸知識BANK編集部
- 不動産市場や投資に関する情報を専門的な視点で解説しています。資産形成や投資戦略に役立つコンテンツを実務的な目線でお届けします。
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