賃貸経営で必要な費用の費目は数多く存在します。
しかし確定申告の際、適切に経費計上を行えば節税につながるため経費計上が可能な費目はぜひとも知っておきたいポイントです。
そこで今回は、賃貸経営において経費計上が可能な費目と不可能な費目のどちらもご紹介します。
目次
賃貸経営で経費計上が可能なもの
そもそも、賃貸経営において経費として落とせる費用は「賃貸経営に関係があるかどうか」が基準となります。
具体的には、以下のような費用は賃貸経営に直接関係するため計上が可能です。
減価償却費
建物や設備などに関して経年による価値の低下に備え、使用可能な期間に応じて見積もった費用のことを指します。
通常、所有物件の種類ごとに定められた法定耐用年数で減価償却費を分割し、毎年少しずつ経費として計上することができます。
種類 | 耐用年数 |
鉄骨造 | 30年 |
木造 | 22年 |
軽量鉄骨造 | 19年 |
各種税金
賃貸経営で発生する以下のような税金は、経費として計上できます。
・固定資産税・不動産取得税・登録免許税
・事業税
・都市計画税
・印紙税
ただし固定資産税や不動産取得税など、一部の税金は賃貸経営に関係する税金のみ計上可能です。
また、所得税や法人税は計上ができません。
管理費
オーナー様自身で物件を管理するためにかかった費用、または管理会社に管理を委託する際に支払った費用です。
例えば共用部の清掃や設備点検などにかかった費用は、管理費とみなされます。
修繕費
物件の修繕にかかった費用のことです。
経年劣化や入居者が使用したことで生じた老朽化の修繕費用、入居者の退去後に行われる原状回復費用などが経費として認められます。
ただし大規模修繕に備えた積立金は、原則として支払いのタイミングで経費計上することができません。
積み立てている段階では、まだ実際に修繕が行われていないからです。
修繕積立金は、実際に修繕を行ったときにその金額をまとめて経費計上できるようになります。
なお、建物や設備の寿命を延ばしたり価値を高めるために発生した「資本的支出」は修繕費ではなく減価償却費として経費計上します。
例えば耐震補強や防水加工などを行った場合、その費用は減価償却費として計上しましょう。
火災保険や地震保険などの保険料
所有物件を守るために加入する保険の保険料も、経費として計上が認められます。
ただし、数年分の保険料を一括で支払っている場合は1年単位で分割した保険料を毎年経費として計上します。
ローンの借入金利息
建物を取得するために借り入れたお金の「利息部分」や「保証料」についても、経費として計上できます。
ただし、返済における「元金部分」は計上できないため注意しましょう。
立ち退き料
長期的な家賃滞納やトラブルなど、何らかの事情で入居者に立ち退いてもらう場合に立ち退き料が発生します。
この立ち退き料も、経費として計上できます。
税理士や弁護士などに依頼した際の報酬
賃貸経営の業務に関して、税理士や弁護士などの専門家に依頼した際の報酬も経費として計上が可能です。
ただし、賃貸経営とは関係がない問題で依頼した場合の報酬は計上できません。
他にもこんな費用が計上できます
ここまで賃貸経営において発生する代表的な費用をご紹介しましたが、他にも以下のような費用も経費として計上できます。
・入居者の募集にかかった広告宣伝費
・賃貸経営に関することでインターネットや電話を使用した際の通信費
・賃貸経営の関係者との交流にかかった接待交際費
・賃貸経営業務で使用した事務用品の購入費
・借地に物件を建てた際にかかる地代・借地料
・アパートの共用部分にかかる水道光熱費
・賃貸経営で雇用している従業員への給与
・賃貸経営に関することで使用した消耗品の購入費(10万円以下)
・賃貸経営に関する業務で発生した交通費
など
賃貸経営で経費計上できないもの
賃貸経営のために支出した場合でも、以下のように経営に直接関係しない費用は経費として計上できません。
・所得税や法人税など不動産に無関係の税金
・物件の取得で生じた借入金返済額の元金部分
・その他私的な目的で使用した費用
なお、賃貸経営とプライベートのどちらにも使っている費用がある場合は、「家事按分」をしましょう。
家事按分とは、費用を賃貸経営で使った割合とプライベートで使った割合を分けて計算する手段のことです。
家事按分で算出した賃貸経営分の費用のみ、経費計上をしましょう。
賃貸経営オーナーの確定申告について
不動産所得(=収入-経費)が年間20万円を超えるオーナー様は、確定申告が必要です。
確定申告の時期に間に合うよう、必要書類を準備したうえで年間の支出・経費を正しくまとめた帳簿(青色申告の場合は複式簿記)を作成しましょう。
その後は確定申告書を作成し、税務署へ提出します。
▼確定申告のやり方についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せて参考にしてみてください
赤字が出た場合の確定申告
万が一賃貸経営で赤字が出た場合でも、確定申告は必要です。
このとき、「損益通算」という制度で所得税や住民税を節税することができます。
損益通算とは、賃貸経営以外の所得から赤字分を差し引いて所得税を計算できる制度のことです。
例えば本業収入が600万円あり、賃貸経営で100万円の赤字が出た場合は以下のように損益通算を行い、本業収入に対する所得税を算出します。
上記で算出した500万円が本業の所得となり、その分の所得税を支払うことになります。
つまり、損益通算を行えば賃貸経営で生じた赤字の分だけ所得税の額を抑える効果が見込めるのです。
経費計上ができる費目を知って正しい確定申告を!
賃貸経営で経費として計上ができるのは経営に直接関係ある費用、計上できないのは経営に直接関係ない費用と覚えておきましょう。
経費計上に関して正しい知識を持って確定申告に臨めば、節税効果にも期待ができます。
なお、確定申告は黒字・赤字にかかわらず行うことをおすすめします。
▼関連記事:確定申告で小難しい単語が専門用語が出てきたらこちらの記事が使えるかも
- この記事を書いた人
- 浦野 瞳
- 様々なジャンルで執筆経験があるフリーランスWEBライターです。 執筆時はリサーチにリサーチを重ね、複雑な不動産関係の知識も分かりやすくお伝えしています。 読者の皆様に、「痒い所に手が届く記事」と感じていただけていれば幸いです。 住宅やインテリアの情報に対しては特に関心が強く、情報の正確性を高めるため個人的にも勉強をして知識をつけています。 実際に賃貸暮らしを続ける中での経験・所感も活かし、オーナー様・入居者様どちらの視点も考慮しながら情報を発信いたします!
- 「暮らす」カテゴリの最新記事