「神宮外苑再開発」どのような街を計画している?反対運動のわけとは

神宮外苑再開発で、国立競技場近くの街並みが大きく変わりそうです。

再開発計画が発表されてから、反対意見が多く寄せられていることを知った方も多いかと思います。

反対される原因のひとつに、樹木の伐採が挙げられます。

しかし、伐採・植え替え本数以上の木を植えることも予定されています。

目指す街の計画とあわせて、なぜ問題視されているのかを解説します。

神宮外苑再開発に8万超えの反対署名!何が問題視されている?

署名は、再開発に伴い、樹齢100年以上の樹木を含む900本近くの木々の伐採予定に対してです。

近隣への説明が不十分だったことで、反対の声が多く上がりました。

東京オリンピックで国立競技場が建て替えられましたが、規制緩和で競技場以上の建築物が建つ計画もあります。

景観や周囲のいちょう並木を含む樹木への影響が懸念されています。

東京オリンピック後どのような街を想定していた?指針を定めた理由は?

神宮外苑は、緑豊かで都心部の貴重な場所です。

日本ではじめて風致地区に指定されたエリアです。

風致地区とは、都市の良好な自然景観を守る必要があると定められた地区です。

自然の多いエリアでありながら、明治神宮野球場や秩父宮ラグビー場など、スポーツ施設も建っています。

緑を守り、文化・スポーツを通じて多くの人が集まる景観を守るため、まちづくりの方向性が定められました。

 

東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり指針 <取りまとめ>から、自然とにぎわいの両立と防災性を高める必要性のポイントを解説します。

自然とにぎわいの両立の点から

東京オリンピックに向け、国立競技場の整備と共に、歩行者の動線確保などが計画されました。

同時に、オリンピック後のまちづくりの一環として、球場やラグビー場の整備も計画に含まれています。

スポーツ施設の建て替えで、国内外を問わず多くの人が集まるスポーツ拠点を目指します。

神宮外苑いちょう並木からの景観と地区一帯の緑の保護、バリアフリーなどにも配慮します。

防災の観点から

スポーツ施設などは、防災拠点としての活用も想定されています。

明治神宮外苑地区は周辺を含め、広域避難場所に指定されています。

※広域避難場所:大地震による火災で延焼が広がった時、身を守るための避難場所として指定された所。

 

軟式野球場は、医療機関近接ヘリコプター緊急離着陸場および災害時臨時離着陸場の候補地です。

医療機関近接ヘリコプター緊急離着陸場および災害時臨時離着陸場は、都が指定する災害拠点病院からおよそ5km以内の陸路地点に指定されます。

老朽化したスポーツ施設は、防災性・避難場所としての機能維持・向上とアクセス性の向上が望まれます。

2022年5月に公表された再開発後の街について

計画のメインは、明治神宮野球場(以下、神宮球場と表記)と秩父宮ラグビー場の建て替えです。

神宮球場に関連する計画

  • 神宮球場をいちょう並木の近くに移設
  • バックネット裏に地上14階建てのホテル棟建設
  • 現在の球場の内野席あたりは、宿泊施設やスポーツ関連施設の入る高さ80メートルほどの建物に

秩父宮ラグビー場に関連する計画

  • 現在の神宮球場と神宮第二球場あたりに移設

国立競技場より10メートルほど高いドーム型スタジアムとなる予定です。

  • ラグビー場と事務所のあるあたりは、オフィスなどが入る高さ185メートルほどのビルに

その他の計画

  • 軟式野球場は会員制テニスコートに

既に建てられている高さ90メートルほどのビルは、オフィスなどが入る190メートルほどのビルに

いちょう並木や木々はどうなる?

聖徳記念絵画館へ伸びるいちょう並木は、そのまま残る予定です。

一方、秩父宮ラグビー場のいちょうは、伐採か植え替えの可能性が高いです。

国立競技場前や軟式野球場を囲む樹木も、伐採される懸念があります。

神宮外苑一帯は、約1,900本の樹木があり、多くは樹齢100年を超えます。

そのうち、約900本が伐採・植え替えられる予定です。

代わりに979本を植える計画のため、樹木の本数は増える計算ですが、歴史ある樹木の伐採に反対の声が上がっています。

 

日本イコモス国内委員会が伐採する樹木を2本に減らせる案を東京都に提示するなど、再開発後に緑・景観をいかに守るかが課題になっていることがうかがえます。

神宮外苑再開発の計画・反対意見などから感じたこと

都心の緑は貴重です。

樹齢100年の樹木となれば、そのままの形で活かしたいと思うのは自然なことだと思います。

しかし、スポーツや文化施設も多く、人々が集まる立地であることを考慮すると、全く手をつけないのは、防災やバリアフリーの点でやさしくない街とも言えます。

 

高層ビル・ホテルなどで人が来るきっかけになれば、街が明るくなり、地域の経済が潤うことも期待できます。

経済の活性化で、その地区に住む方に還元されるのではないでしょうか。

事業者は、住民の方に事前に丁寧に説明し、意見をうかがいながら、街並みの良さを活かしつつ、誰にでも魅力的な街にすることが重要と再認識しました。

何より、住む人に「ずっと住みたい」と思ってもらえる街にできそうか?という視点は忘れてはならないと改めて思いました。

住む人にも通勤・通学・遊びに来る人にも心地よい街づくりを

神宮外苑は、利便性も景観への配慮も求められる点で、都市開発を難しくしていると考えられます。

自然豊かなエリアに賃貸物件を建てることが多い弊社にとっても、計画と反対意見は大変参考になりました。

様々な人が住む都市の街づくりは賛成意見、反対意見が入り乱れます。

どんな人にも住みやすい街づくりへと作り替える本計画はどのような形で完成するでしょうか。

この記事を書いた人
星脇 まなみ
2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
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