所沢駅周辺は、タワーマンションやショッピングモール、商業施設などができ、再開発が進んでいます。
街の発展のおかげか、SUUMO発表の住みたい街ランキングでもランクアップしています。
さらに2022年の穴場だと思う街ランキングでは、TOP10入りを果たしています。
そんな所沢が都心に出なくても駅周辺だけで暮らしが完結する街になったのには、都市計画が考えられていると予想されます。
そこで、所沢駅周辺のまちづくりについて調べてみました。
目次
所沢市が作成・公表した「所沢駅周辺まちづくり基本構想」について
所沢駅周辺は、所沢市の中心です。
しかし、いくつか課題を抱えていました。
たとえば、道路などの都市基盤の整備、商店街の活性化、土地の有効利用、防災性の向上などです。
特に、土地の有効利用に関する内容は、駅周辺をどのような街にしたいか見えてきます。
東西の駅前の用途地域は、商業地域です。
商業地域とは、遊戯施設や大型の店舗なども立てられる地域です。
容積率(敷地面積に対して建築物を立てられる割合)も、住居しか建てられない地域より大きいです。
しかし、基本構想を立てる前は、有効利用できていない土地が多くありました。
そこで、市と地元関係者の協力で西口地区と日東地区、西武鉄道株式会社による東口地区のまちづくりが検討されました。
【基本構想】
・対象:所沢駅を中心に半径約500m圏
・駅周辺に都市機能(文化、教育、医療・福祉、商業などを提供する機能)を集める
・3つのまちづくり検討地区(西口、東口、日東地区)を考慮した内容とする
3つの地区で考えられた方向性
- 西口地区
- 東口地区
- 日東地区
どのような地域を目指し、実現に向け何を計画したかそれぞれ紹介します。
西口地区
市の中心にふさわしい発展性を感じられ、良好な住環境が守られた地域を目指します。
- 駅周辺の交通渋滞を解消できる道路の整備
- 防災機能を持つ公園の配置
- 鉄道の車輌工場跡地の活用
など
上記のような取り組みが検討されました。
たとえば「所沢駅西口第一種市街地再開発事業」。
以前は、駅前広場や道路は整備されていませんでした。
老朽化した木造低層住宅の密集も見られました。
将来の発展に対応できるよう、駅前広場と周辺道路の整備、土地の有効活用で都市機能の活性化を目指すことになりました。
- ショッピングセンターの建設
- 安全に歩けて楽しく回遊できる歩行者空間の整備
- 駅前広場に航空管制塔モチーフのシンボルタワーと航空機が描かれたモニュメント
※所沢は、日本の航空発祥地です。
交通渋滞が緩和されると、周辺地区から多くの人が来やすくなると期待されます。
地区内の移動もしやすくなり、利便性向上にもつながります。
東口地区
住む・遊ぶ・学ぶ・働くのバランスのとれた拠点を目指します。
駅舎改修と商業ビルの建設は、西武鉄道株式会社の「所沢駅東口駅ビルの計画」に基づきます。
以下のような特徴を持つ駅に変わりました。
- シンボルツリー・自然光を取り入れた吹き抜けが特徴のセントラルプラザ
- セントラルプラザとつながる南改札の設置
- 芝生広場や鉄道モニュメントのある屋上庭園「とこにわ」
- 屋外デッキ
南改札の設置は、混雑緩和とスムーズな乗換に役立っています。
シンボルツリーや芝生広場は、街の緑化にも貢献しています。
日東地区
駅に近接しているものの、道路整備などに課題があり、土地利用が進まない、防災面などが懸念されました。
そこで、道路や公園の整備を進めることになりました。
商業系の施設建設は、駅周辺の立地を活かした土地の有効活用です。
魅力的な商業圏にしながら、土地利用の目的の明確化、要するに、商業地と住宅地の共存が求められます。
駅周辺地区の上位計画・関連計画について
駅周辺のまちづくりの計画には、基本構想以外も関係しています。
基本構想は、上位計画や関連計画の影響を受けているのではと考えられます。
上位計画
- 第4次所沢市総合計画基本構想
- 第4次所沢市総合計画後期基本計画
- 所沢市まちづくり基本方針
- 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針
関連計画
- 所沢駅周辺まちづくり総合支援事業調査
- 所沢市中心市街地活性化基本計画
- 所沢市中心市街地地区都市再生整備計画
上記から、上位計画の「所沢市まちづくり基本方針」、関連計画の「所沢駅周辺まちづくり総合支援事業調査」「所沢市中心市街地活性化基本計画」を取り上げます。
「所沢市まちづくり基本方針」について
基本方針で目指す街から、所沢駅周辺地区に求められる姿が見えてきます。
基本方針では、「ゆとり・うるおい・活力のあるまち」を目指します。
市街地は、特徴ごとにつくられる3つのゾーンと2つの拠点が骨格となっています。
3つのゾーン
- ゆとり
- うるおい
- 活力
2つの拠点
- 生活拠点
- 学習・文化拠点
駅周辺地区を含む中心市街地は、「にぎわいとうるおいのあるまち」「広域的生活拠点」で構成されると位置づけられました。
「所沢駅周辺まちづくり総合支援事業調査」について
下記がまちづくりのテーマです。
- 住み続けたい魅力あるまち
- 多様な世代が定住するにぎわいのあるまち
- 住んでみたい・行ってみたい、歩いて楽しいまち
3つのゾーンを活かしたまちづくりを目標に掲げます。
3つのゾーン
- 都市拠点ゾーン
- 商業・都市型住宅複合ゾーン
- レクリエーション・文化ゾーン
所沢駅は、都市拠点ゾーンにあります。
「所沢市中心市街地活性化基本計画」について
所沢市の中心市街地のまちづくりの基本です。
3つの中心性をつくることが基礎にあります。
3つの中心性
- 圏域の中心
- 生活の中心
- 創造の中心
計画の基本は、所沢の自然・歴史・文化を活かしながら、周辺都市も含めた広域的生活拠点にふさわしい「にぎわいとうるおいのあるまち」の形成です。
下記5つの活性化が目標です。
- 風格ある生活文化を誇れる所沢の顔となる街
- 地域らしい産業が生まれ、発展する街
- 安心・快適に過ごせる質の高い都市的サービスを受けられる街
- 高度な都市空間を備えた街
- 人々でつくり上げる街
駅周辺地区の位置づけなどを踏まえた3つの地区の方向性とは?
基本方針・上位計画・関連計画を総合し、西口・東口・日東地区に求められる役割などがより詳しく示されました。
西口地区
車輌工場跡地を活用した市街地開発で、道路整備と土地の有効活用をします。
商業・サービス、教育・文化などの都市機能と、都市での暮らしにふさわしい住宅の建築を誘導するためです。
新たなライフスタイルの発信拠点を目指しつつ、周辺で不足する公園・緑地といったうるおい空間も確保します。
東口地区
さまざまな都市機能の集まる西口地区に加え、東口地区も商業・サービス、文化・交流・娯楽などの機能を誘導します。
あらゆる機能をそろえ、駅前に人が集まりやすくします。
駅舎改修は、所沢市の表玄関にふさわしい駅前にするために実施されました。
東西が行き来しやすくなる東西自由通路もつくられました。
東西自由通路は、東西地区が一体となり再開発を進めたおかげではないでしょうか。
東西一体の再開発は、うるおいのあるまちの実現にも貢献していそうです。
うるおいのあるまちにするため、公園・緑地といったオープンスペースの確保と、屋上・壁面を活用した緑化などを進めることになりました。
東西駅前地区の駅上広場や屋上庭園は、緑化促進のひとつです。
日東地区
地域密着の商業・サービス・飲食店などと、都市の生活に合う住宅を誘致します。
ファルマン通り西側の既存の店舗との連携も欠かせません。
再開発と連携の相乗効果で、人が集まる地域となることが期待されるためです。
所沢駅周辺地区と銀座地区の接点に当たる地区なので、両地区に人の流れを誘導する働きが求められます。
人の流れを活発にするための取り組みが、歩いて楽しい街につながるのではないでしょうか。
所沢市の中心にふさわしいエリアに求められること
- 人・モノ・情報が集まり発信できる
- 人々が行き交う拠点
- 商圏の拡大
- 居住機能
- 緑とオープンスペース
など
上記の実現で、経済と市民生活が共存する街がつくられます。
「持続可能なまちづくり」とも言えます。
所沢駅の利用状況と計画を見ると、居心地の良い街になるのは当然!?
所沢駅は、乗り降りする人より乗換で利用する人が多い駅です。
そこで、利用者が駅を降りて楽しめる仕組みや環境が求められます。
商業施設は、楽しめる街の一環と考えられそうです。
駅周辺は、ファミリー世帯が増えています。
よって、住宅ニーズが高いと考えられます。
同時に、自然も求められるのではないでしょうか。
色々な計画に目を通すと、「うるおいのあるまち」「歩いて楽しい街」を目指していることが分かります。
「うるおいのあるまち」「歩いて楽しい街」を実現するために、ユニバーサルデザインを参考に歩行空間がつくられています。
ユニバーサルデザインは、全ての人に使いやすいデザインです。
歩行空間の配慮からも、誰もが「住みやすい」「また訪れたい」まちづくりがされていると予想できます。
所沢市まちづくり基本方針を踏まえ、以下にも取り組んでいます。
- 街並み形成
- 不燃化・耐震化
- 道路整備で避難しやすい・緊急車両が通りやすいなど防災性の配慮
街並み形成、不燃化・耐震化は、ショッピングモール化・道路整備にあわせた沿道の建替えなどで実行します。
所沢駅は再開発後の街の姿を知る参考になる!
まちづくりは、自治体と事業者だけではなく、市民の方との協力が必要です。
所沢駅周辺のように、既に市街地が形成されている街のつくりかえは、地元の方の理解が欠かせないことも、さまざまな計画を読んで分かりました。
所沢駅のように再開発の進む駅周辺は、住む人や駅を降りる人が増えたらどのような街となるのか楽しみにさせます。
利用者が多いにもかかわらず大型商業施設や集合住宅のない街は、誘致・開発されるのではと予想します。
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- この記事を書いた人
- 星脇 まなみ
- 2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
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