ご高齢の方や外国の方など、部屋探しに困ることの多い方が増えています。
「空き家・空室があり、住まいに困っている方を助けたい」
そんなオーナー様に知っていただきたいのが、住宅セーフティネット制度です。
制度を利用するには条件があります。
そこで、制度の利用に必要なことが分かる概要をまとめました。
制度の対象となる住宅に改修するための補助金についても本記事で紹介しています。
どのような方が入居できる住宅なのか、部屋探しから入居後のサポートなどもまとめています。
賃貸契約に不安のある方もご覧ください。
目次
住宅セーフティネット制度とは
高齢者、障がい者、外国人など、部屋探しに困るケースの多い方(住宅確保要配慮者)のための住まいとして、民間の空き家・空室を活用することです。
少子化により住宅確保要配慮者は増えると予想されています。
しかし、住宅に困っている方のための公営住宅やUR賃貸住宅などを一気に増やすのは難しいです。
住宅確保要配慮者に対するセーフティネット住宅を国・地方自治体だけで整備する場合の戸数は、既に課題とされています。
そこで、民間の空き家などを活用する制度がつくられました。
制度は、下記の3つで構成されています。
- 住宅確保要配慮者を理由に入居を断らない住居の登録制度
- 改修工事などへの経済的支援
- 入居者への居住支援
登録制度について
住宅確保要配慮者の方に空き家・空室を提供したいオーナー様は、「セーフティネット住宅情報提供システム」に登録が必要です。
セーフティネット住宅情報提供システムは、住宅確保要配慮者の方が部屋探しできる、ポータルサイトのようなサイトです。
掲載費用はかかりません。
令和4年7月以降、登録手数料も無料になっています。
以下の基準を満たせばセーフティネット住宅として登録できます。
- 消防法・建築基準法などに違反していない
- 新耐震基準に適合している
- 台所・トイレ・浴室など、一定の設備を備えている
- 床面積25平方メートル以上
- 近隣の同じタイプの部屋の家賃とのバランスを崩さない
要件は、都道府県で強化・緩和できます。
たとえば東京都では、平成8年3月31日までに着工した一般住宅なら、床面積15平方メートル以上で登録できます。
住宅確保要配慮者とは
下記に該当する方たちを指します。
- 低所得者
- 発災後3年以内の被災者
※国土交通省令では、東日本大震災などの大規模災害の被災者は災害発生から3年以上経過していても住宅確保要配慮者に定めています。
- 高齢者
- 高校生くらいまでの子どもを育てている
- 外国人・児童虐待やDV被害を受けている・犯罪被害者など条例や法令で居住の確保に関する規定のある人
- その他、都道府県や市区町村で定める人
東京都は新婚世帯、LGBT、住宅確保要配慮者に生活支援する人などを定めています。
経済的支援について
- 改修工事への支援
- 家賃低廉化支援
改修工事などの他、都道府県独自の補助制度が備えられている場合もあります。
改修工事への支援
セーフティネット住宅は、条件を満たさないと登録できません。
場合によっては部屋の改修が必要です。
住宅確保要配慮者専用住宅への改修工事には補助金が出ます。
対象工事 |
|
補助率 | 国1/3
地方公共団体を通じた補助の場合、国1/3+地方1/3 |
限度額 | 50万円/戸
※上記1~5、8の実施の場合、1戸あたり50万円加算 ※バリアフリー改修でエレベーターを設置する場合、1戸あたり15万円加算 車いすの方の利用を想定したトイレ・浴室などへの整備は、1戸あたり100万円加算 ※子育て世帯改修で子育て支援施設を併設する場合、1施設1,000万円 |
家賃低廉化支援
国と地方公共団体は、オーナー様が家賃を安くした住宅確保要配慮者専用住宅に低所得の方が入居した場合、値下げした額に補助金を支給しています。
補助率 | 国1/2+地方1/2 |
限度額 | 1戸あたり2万円/月 |
対象入居者 | 月収15.8万円(収入分位25%)以下の世帯
※子育て世帯・新婚世帯は月収21.4万円(収入分位40%)以下、多子世帯は月収25.9万円(収入分位50%)以下 |
※月収15.8万円を超える子育て世帯などは、家賃債務保証料等低廉化補助と併用できません。
家賃債務保証料等低廉化支援とは
家賃債務保証会社などが保証料を値下げし、低所得者の方が住宅確保要配慮者専用住宅に入居した場合の、値下げした額への補助です。
補助金は保証会社などに支払われます。
補助率 | 国1/2+地方1/2 |
限度額 | 3万円/戸 |
対象入居者 | 月収15.8万円(収入分位25%)以下の世帯
※子育て世帯・新婚世帯は月収21.4万円(収入分位40%)以下、多子世帯は月収25.9万円(収入分位50%)以下 |
都道府県独自の補助制度について
東京都では、登録協力報奨金や見守り機器設置費等補助などを整備しています。
登録協力報奨金は、不動産会社からオーナー様への働きかけで空き家・空き室を住宅確保要配慮者専用住宅として登録すると、都から5万円交付される制度です。
見守り機器設置費等補助は、居室内にご高齢の方を見守れる機器を設置すると、購入費・取付費の1/2が補助される制度です。
上限は1戸あたり3万円です。
入居者への居住支援
入居者様が安心して暮らせるよう、居住支援法人や居住支援協議会がサポートを行います。
たとえば、定期訪問や緊急時の駆けつけ、電話や機器を用いた安否確認、家賃を滞納したといった生活相談などです。
1人暮らし世帯の物件オーナーは要チェック?「孤独死対策」に有効なサービスの種類と選び方 | 賃貸知識BANK
内見や賃貸借契約の立ち会いなど、部屋探しにも寄り添ってくれます。
入居者様への支援はオーナー様にもメリットがあります!
入居者様へのサポートは、住宅確保要配慮者の入居で想定されるデメリットを減らしながら、空き家・空室対策と困っている方への住まいの提供の両立を実現できそうです。
事故物件となるリスクの軽減
ご高齢の方の入居を断る理由として孤独死のリスク(所有する物件がいわゆる「事故物件」となるリスク)が挙げられます。
特殊清掃が必要など発見までに時間のかかった自然死や不慮の事故死は、部屋探ししている方へ告知しないとなりません。
ただし、特殊清掃不要、つまり、すぐに発見された自然死などは、告知義務がありません。
事故物件のガイドラインが発表されました!告知義務のあるものと伝える時の注意点は? | 賃貸知識BANK
見守りサービスがあれば、入居者様に万が一のことがあっても、すぐに対応できて事故物件を回避できる可能性が高まります。
賃貸経営で想定されるリスクへの対策
孤独死以外にも家賃滞納、外国の方が文化の違いや言葉を理解できないことによる近隣とのトラブルなども懸念されます。
しかし、家賃滞納時の相談や部屋を契約する際の立ち会いなどに対応してもらえるため、家賃収入が入ってこないなど様々なリスクを軽減できます。
住宅セーフティネット制度は社会貢献しながら空室対策できる方法
困っている方の役に立つ賃貸経営に興味のあるオーナー様は、住宅セーフティネット制度を活用するのもひとつの手です。
賃貸への入居を断られた、審査が不安という方もいるかもしれません。
しかし、全ての大家さんが住宅確保要配慮者に当てはまる方に入居してもらいたくないとは思っていません。
困っている方のために住まいを提供したいというオーナー様ももちろんいます。
セーフティネット住宅情報提供システムに掲載された住宅は、幅広い属性の方を受け入れています。
一度チェックしてみてください。
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- この記事を書いた人
- 賃貸知識BANK編集部
- 不動産市場や投資に関する情報を専門的な視点で解説しています。資産形成や投資戦略に役立つコンテンツを実務的な目線でお届けします。
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