埋蔵文化財包蔵地の工事に必要な手続きとは?着工までの流れとあわせて解説

埋蔵文化財を守るために、地中に文化財が埋もれている土地は、許可なく開発できません。

埋蔵包蔵地に該当する土地の建築工事は、届出が必要です。

場合によっては、届出をしても、すぐに着工できるとは限りません。

ですが、工事までの手続きと流れが分かると、着工までに時間がかかっても安心です。

そこで、埋蔵文化財包蔵地の工事に必要な届出・工事開始までの流れを、埋蔵文化財と包蔵地とあわせて解説します。

埋蔵文化財とは

埋蔵文化財とは、地下に埋もれている文化財のこと。

文化財がある場所は「埋蔵文化財包蔵地」と言い、「〇〇遺跡」と表されます。

「周知の埋蔵文化財包蔵地」(埋蔵文化財包蔵地として知られる場所)は、全国に約46万ヶ所あります。

埋蔵文化財は、文字や絵図などが残されていない時代を知る、貴重な手がかりです。

よって、保護が求められます。

工事したい土地が周知の埋蔵文化財包蔵地にあたる場合、文化財保護法により、土地のある教育委員会に届出が必要です。

第九十二条 土地に埋蔵されている文化財(以下「埋蔵文化財」という。)について、その調査のため土地を発掘しようとする者は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、発掘に着手しようとする日の三十日前までに文化庁長官に届け出なければならない。ただし、文部科学省令の定める場合は、この限りでない。

2 埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項の届出に係る発掘に関し必要な事項及び報告書の提出を指示し、又はその発掘の禁止、停止若しくは中止を命ずることができる。

第九十三条 土木工事その他埋蔵文化財の調査以外の目的で、貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地(以下「周知の埋蔵文化財包蔵地」という。)を発掘しようとする場合には、前条第一項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日前」とあるのは、「六十日前」と読み替えるものとする。

2 埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項で準用する前条第一項の届出に係る発掘に関し、当該発掘前における埋蔵文化財の記録の作成のための発掘調査の実施その他の必要な事項を指示することができる。

引用元:文化財保護法

届出後、教育委員会は遺跡の取り扱いを決めます。

遺跡を現状のまま保存できない場合、発掘調査を経て記録保存されます。

調査にかかる費用は、事業者負担です。

ただし、個人の営利目的ではない住宅建設など、事業者に負担を求めるのが適切でない場合、公費で負担されます。

新たに遺跡・出土品を発見した場合、文化財保護法に則り、以下の対応が必要です。

  • 新たに遺跡を発見した場合→届出(根拠:96・97条)
  • 所有者が明らかでない出土品を発見した場合→発見者が管轄の警察署長に提出(根拠:100条)

文化財と認められた所有者不明の出土品は、原則、都道府県の所有になります。

埋蔵文化財包蔵地が不動産売買でデメリットになると言われる理由

世間の反応を見てみると、埋蔵文化財包蔵地のある土地は手続きが増えることと、工期が遅れたりするリスクがあるため購入のハードルが高い印象があるようです。

売買の際に不動産会社は、買主に埋蔵文化財包蔵地であることを説明する義務があります。

下記のようなリスクがあるためです。

  • 調査費用を負担する必要がある分、売却価格が下がる
  • 建物の形状が制限され、購入を避ける方が多く、売却したい時に売れない可能性がある
  • 完成が遅れる場合がある

 

弊社が管理するアパート、シエスタヴィラ東府中グレシアーレでも、埋蔵文化財包蔵地に該当する場所があり、法令に従い、管轄の市に申請しました。

通知結果は、「埋蔵物が埋まっている可能性のある地層まで工事が及ばないので進めて大丈夫」とのこと。

よって、問題なく工事ができました。

埋蔵文化財包蔵地がデメリットとなるかは、どの地層まで影響が来るかなどで判定されているようで運によるのかもしれません。

埋蔵文化財の手続きについて

工事予定の土地が埋蔵文化財包蔵地の場合、工事着工の60日前までに届出が必要です。

届出しない工事は、文化財保護法違反に当たり、工事の注意・禁止を命令されることがあります。

埋蔵文化財包蔵地は、役所窓口の他、自治体の地図情報などで検索して事前に確認できます。

たとえば、東京都のシステムはこちらです。

照会の結果、包蔵地内か包蔵地外かによって、工事着工までの流れが異なります。

包蔵地外の場合

届出不要で着工できます。

ただし、工事中に遺跡を確認したら、届出してください。

工事が遺跡に影響を及ぼすか否かで、異なる調査を経て工事を続けられます。

  • 工事が遺跡に影響しない場合→着工時立合調査→工事続行
  • 遺跡に影響する場合→埋蔵文化財発掘調査届の提出後、本格調査→工事続行

包蔵地内の場合

  • 1. 工事着工60日前までの届出
  • 2. 教育委員会から「慎重に施行」「立会」「試掘調査」いずれかが記載された通知が届く

慎重に施行

特に必要な調査はありません。慎重に工事を進めてください。
遺跡などを発見したら、工事を中断し、自治体に連絡します。

立会

着工時の専門職員による調査を経て、工事に入れます。

試掘調査

重機の掘削による調査が行われます。
掘削するのは、自治体委託の業者です。
遺跡の有無、または、遺跡が工事の影響を受けるか否かが、着工までの期間を左右します。

  • 遺跡などがないか、あっても工事で影響を受けない場合→着工
  • 工事の影響を受けると判断された遺跡がある場合→本格調査→着工

埋蔵文化財包蔵地の工事は通常とプロセスが異なります

埋蔵文化財包蔵地の工事は、状況によってはいくつもの調査が実施されます。

不動産売買の懸念材料になり得ますが、不利なケースばかりではありません。

活用したい土地が包蔵地か気になる、包蔵地で資産運用したいといった方は、不動産会社へのお問い合わせがおすすめです。

この記事を書いた人
星脇 まなみ
2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
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