不動産の重要事項説明書に含まれる「新都市基盤整備法」とは?概要をわかりやすく解説

不動産取引をするにあたり、買主に説明するべき重要な作業が「重要事項説明」です。

内容は、権利関係や法令など様々な項目に分けられています。

その中に「新都市基盤整備法」という法律が出てきますが、具体的にどのような法律であるかはご存知でしょうか。

今回は、「新都市基盤整備法」内容についてわかりやすく解説していきます!

「新都市基盤整備法」は何の法律?

新都市基盤整備法とは、「新都市基盤整備事業」について定められた法律です。

著しく人口が集中する大都市の周辺に新都市をつくる際、大都市における人口集中と宅地の需要に応じ、秩序を保ちながら大都市圏を発展させることを目的に制定されました。

新都市基盤整備事業に関係する土地の取引を行う場合、買主に対して新都市基盤整備法に関する説明が義務付けられています。

「新都市基盤整備事業」とは

新都市基盤整備事業とは、いわば「新しい都市をつくる事業」のことです。

新しい都市の開発にあたり、基盤となる道路などの基幹施設や開発の核ともいえる「開発誘導区」の整備が行われます。

開発誘導区:住宅・官公庁・医療・教育・商業施設を建設する、開発における中核地区

開発誘導区の整備に加え、1ha当たり100〜300人を基準として5万人以上が居住できる規模の区域において施行するものとされています。

元々、新都市基盤整備事業は人口増加が著しい大都市の地域において、「人口5万人以上の都市を新しく作って人口増加に対処しよう!」といったものでした。

上記にて挙げた施設の他に住宅の建設も新都市基盤整備事業に含まれており、「新住宅市街地開発事業」の延長線上にある事業と言えます。

ちなみに新都市基盤整備法は1972年に制定されましたが、50年経った現在に至るまで新都市基盤整備事業が計画・実行された事例はないようです。

重要事項説明書の対象となる項目

先述の通り、もし新都市基盤整備事業に関する土地を取引することになれば、重要説明事項として新都市基盤整備法に関する説明が必要です。

ただし新都市基盤整備法のすべてではなく、以下の対象項目について説明することになります。

  • 第39条 土地整理における仮換地の指定
  • 第50条 建築物の建築義務
  • 第51条 第1項 開発誘導地区内の土地等に関する権利の処分の制限

参考:新都市基盤整備法

売買の場合は上記3点が説明の対象となっていますが、賃借の場合は「法第51条 第1項」のみが対象です。

「新住宅市街地開発法」との違い

街づくりに関わる法律という意味では新都市基盤整備法と似ている、「新住宅市街地開発法」

これは「新住宅市街地開発事業」について定められた法律で、新住宅市街地開発事業により造成された宅地の取引を行う場合は重要事項説明の対象となります。

新住宅市街地開発法は人口集中が著しい市街地周辺の地域において、主に以下のことを目的として制定されました。

  • 健全な住宅市街地の開発
  • 住宅に困窮する国民に、居住環境が良い住宅地を大量に供給する

「新住宅市街地開発事業」とは

新住宅市街地開発事業という単語は「新都市基盤整備事業」に関する解説にも出てきましたが、具体的にどのような事業を指すのかご存知でしょうか?

新住宅市街地開発事業とは単に住宅を建設するだけでなく、道路・公園・学校・医療機関・商業施設・事業所など生活に欠かせない施設がすべて揃った「ニュータウン」をつくる事業のことです。

例えば「千里ニュータウン」や「多摩ニュータウン」、「つくば研究学園都市」などは新住宅市街地開発事業によって建設されています。

 

住宅市街地の開発にあたり、事業区域の土地を買収したうえで計画に基づいて宅地や道路などを造成します。

その後、原則公募にて住宅を必要とする人に売却するという流れが一般的です。

つまり新住宅市街地開発法は、「生活するために必要な住宅や施設が揃った街づくり」における法律となります。

一方で新都市基盤整備法は、上記に官公庁なども加えてより機能が拡大した都市づくりにおける法律です。

このことから、”新都市基盤整備法は新住宅市街地開発法の延長線上にある”と言えるのです。

新たな都市づくりの法律「新都市基盤整備法」が適用される日は来る?

人口減少が懸念されている現代において、新たな都市がつくられる可能性は低いです。

とはいえ、今後の情勢次第では新都市基盤整備法の説明が必要となる未来が訪れるかもしれません。
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この記事を書いた人
浦野 瞳
様々なジャンルで執筆経験があるフリーランスWEBライターです。 執筆時はリサーチにリサーチを重ね、複雑な不動産関係の知識も分かりやすくお伝えしています。 読者の皆様に、「痒い所に手が届く記事」と感じていただけていれば幸いです。 住宅やインテリアの情報に対しては特に関心が強く、情報の正確性を高めるため個人的にも勉強をして知識をつけています。 実際に賃貸暮らしを続ける中での経験・所感も活かし、オーナー様・入居者様どちらの視点も考慮しながら情報を発信いたします!
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