設計性能評価と建設性能評価とは?違いは評価のタイミング!見方をわかりやすく解説

設計性能評価と建設性能評価は、住宅性能表示制度によって実施されます。

住宅性能表示制度は、平成12年4月1日施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称:品確法)」で定められました。

本記事では設計と建設で何を評価するのか、評価書から住宅の特徴を理解できるようになる見方についてわかりやすく解説します。

住宅性能評価と関係のある住宅性能表示制度についてもご説明します。

住宅性能表示制度とは

平成12年度から開始された任意の制度です。

住宅の基本性能を、第三者機関(登録住宅性能評価機関)が国が定める基準に基づき、設計図書や現場の検査などで評価します。

 

評価にかかる費用は、検査機関で異なります。

しかし、評価方法と表示方法は統一されています。

品確法は住宅性能表示制度の他、以下についても制定しました。

  • 新築住宅の基本構造部分の10年の瑕疵担保責任期間の義務化
  • 住宅に関するトラブルの迅速な解決のための指定住宅紛争処理機関の整備

 

平成27年7月、「建築物のエネルギー消費性能に関する法律(建築物省エネ法)」の制定で、住宅性能表示制度の表示基準と評価方法基準が改正されました。

基準が見直されたのは、劣化の軽減、温熱環境・エネルギー消費量、音環境に関してです。

制度を利用すると交付される評価書について

住宅性能評価の結果をまとめた2つの評価書が交付されます。

「設計住宅性能評価書」「建設住宅性能評価書」です。

設計段階に審査する「設計性能評価」と、施工中・完成時の検査で「建設性能評価」が実施されます。

設計評価の結果をまとめたのが「設計住宅性能評価書」、建設評価の結果をまとめたのが「建設住宅性能評価書」です。

どちらも、10の分野に関する基準で評価されます。

  • 構造の安定
  • 火災時の安定
  • 劣化の軽減
  • 維持管理・更新の配慮
  • 温熱環境・エネルギー消費量
  • 空気環境
  • 光・視環境
  • 音環境
  • 高齢者等への配慮
  • 防犯

設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書の10の検査項目と結果の見方

等級が高いほど良い評価となります。

※等級以外で結果をまとめる項目もあります。

それぞれ何を審査・検査しているか、評価書の結果の見方とあわせて解説します。

構造の安定

地震などが起きた時の倒壊・損傷のしにくさを等級で表示するか、免震建築物であることを示します。

たとえば、等級1は「数百年に一度発生する地震で倒壊・崩壊などしない」建築物を意味します。

「数百年に一度発生する地震の1.5倍の力でも倒壊・崩壊などしない」建築物と評価されると、等級3を獲得できます。

等級1でも建築基準法を守った建築物なので、大規模な地震にも十分耐えられます。

評価を受けるメリットとして、手抜き工事などが起こりにくいことが挙げられます。第三者機関が審査するためです。

基礎や地盤の情報なども、記載されます。

火災時の安全

火災が発生した時、安全に避難できるか、延焼しにくいかなどを評価します。

どのような火災警報装置が設置されているか、火災・火熱をさえぎる時間などで等級が決まります。

感知警報装置設置等級(自住戸発生時)2級と3級は、装置の設置が義務づけられる箇所と、火災を感知するまでの時間が違います。

2級 3級
  • 廊下・階段・居室いずれか1ヶ所と、台所に設置されている
  • 台所などで発生した火災を感知し、警報を出せる
台所と全ての居室の火災をすばやく感知して警報を出せる

耐火等級は、火災による炎や熱をさえぎる時間で決まります。

たとえば、延焼のおそれのある開口部の耐火等級3級なら、開口部が熱を60分相当以上さえぎれることを表します。

劣化の軽減

住宅の劣化を遅らせるための対策がどこまでとられているか検査します。

劣化対策等級3級なら、通常想定される経年劣化・維持管理下で、大規模な改修工事が必要になる期間を3世代(75~90年)ほどまで伸ばす対策がとられている建築物です。

維持管理・更新の配慮

給排水管・給湯管・ガス管の点検・清掃・補修のしやすさで評価します。

維持管理対策等級2級なら、配管をコンクリートに埋め込まないなどの対策がされています。

共用排水管の更新対策として、共用排水立管の設置場所も表示されます。

「バルコニー」「住戸専用部」などにチェックできるようになっています。

温熱環境・エネルギー消費量

省エネしながら効率的な冷暖房が可能な対策がとられているか、断熱性能などを評価します。

断熱等性能等級3級は、平成4年に制定された基準に適合する、暖房機器使用時のエネルギー削減のための対策がとられています。

地域区分は、気象条件によって地域を8つに分けたものです。

建築物のある地域の数字が〇で囲まれます。

1・2:北海道等

3:北関東等

4:東北・北関東等

5・6:関東・東海・近畿・中国・四国・北九州等

7:南九州等

8:沖縄等

空気環境

シックハウス症候群の原因のホルムアルデヒドが建材に含まれていないか、換気設備の有無などを評価します。

 

ホルムアルデヒド対策の項目は、内装・天井裏などに使用する建材を選択します。

特定建材を使用する場合のみ、「ホルムアルデヒド発散等級」を記載します。

等級3は、ホルムアルデヒドの発散量が極めて少ない建材を表します。

換気対策の項目は、機械換気設備や換気できる窓の有無を表します。

光・視環境

窓など開口部の大きさをまとめます。

単純開口率は床面積に対する開口部の大きさ、方位別開口比は東西南北と屋根にある開口部の面積の割合を%表示します。

たとえば、北より南の開口部が広いなどが分かります。

音環境

共同住宅の遮音性(他の部屋からの音や、他の部屋への音の伝わりにくさ)を評価します。

設計段階は実測ではなく予測なので、設計住宅性能評価書と測定値をまとめる建設住宅性能評価書で結果が異なる場合があります。

床衝撃音対策等級は、物を落とした時、衝撃音が伝わりにくい対策の程度が分かります。

透過損失等級からは、どの程度話し声などが聞こえにくい壁・サッシなのか分かります。

高齢者等への配慮

バリアフリーへの配慮を評価します。

室内・共用廊下に手すりを設置する、段差をなくすなど、高齢者や身体が不自由な方も安全に移動できるなら、等級は1か2を獲得できます。

どこまで対策しているかで評価が変わります。

等級3以上を獲得するには、介助者への配慮も欠かせません。

たとえば、廊下の幅、エレベーターの設置などです。

防犯

ドアや窓などに、外からの侵入者を防ぐ対策がとられているか評価します。

評価対象は、出入口、一定の大きさ以上の開口部です。

たとえば、防犯性能の高いものが使用されていれば「すべての開口部が侵入防止対策上有効な措置の講じられた開口部である」の四角が塗りつぶされます。

性能評価書は住宅の建築・売買の安心を保証します

設計性能評価と建設性能評価を見れば、物件の特徴が分かります。

当社の賃貸物件シエスタシリーズでも、設計性能評価を検査機関に依頼し、評価書の発行を始めました。

建築を行う立場として、客観的に見ても信用できる建物である証明に役立てています。

▼関連記事
この記事を書いた人
星脇 まなみ
2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
「建てる」カテゴリの最新記事