アスベストの事前調査の結果報告。義務化される工事費用・違反時の罰則は?

アスベストは健康被害を及ぼすことから、2006年9月から建材への使用が禁止されています。

ところが、報告義務がなかったため、工事前にアスベストを含む建材か否かの調査がされていない事案が多くありました。

地下駐車場などにも使われているので、適切な処理がされていないと、知らないうちに吸っていたかもしれません。

そこで、必要な対策がとられるよう、事前調査の結果報告が義務化されました。

義務化されたことにより物件オーナーがリフォーム、新築工事を行う際の費用が上昇することが予想されます。

調査結果を報告しないといけない工事費用の規模、報告の仕方、違反時の罰則を解説します。

アスベストの事前調査結果の報告義務化はいつから?報告が必須な工事は?

2020年7月の石綿障害予防規則(石綿則)改正で、2022年4月から事前調査報告義務化がスタートしました。

石綿とはアスベストのことです。

1950年頃から日本で建材として使われていました。

解体などで飛散し、細かいかけらが肺に突き刺さると肺がんの原因となるため、2006年9月からは建材への使用が禁止されています。

禁止されるまで、鉄骨造を中心に住宅によく使われていました。

2021年4月から義務化されていること

解体・改修・リフォームなどの工事に使う全ての材料のアスベストの事前調査です。

調査は設計図書・目視で実施されます。

調査結果の記録は3年間保管しないといけません。

2022年4月から義務化されたこと

一定規模以上の工事の事前調査の結果を、施工業者が電子システムで所轄の労働基準監督署・自治体に届出ることです。

電子申請できない場合、紙での申請も可能です。

 

下記の工事が対象です。

  • 解体部分の床面積80平方メートル以上の解体工事
  • 請負金額100万円以上の改修工事

結果報告は、工事開始前までにするよう求められます。

調査終了後〇日以内と具体的に定められているわけではありません。

ただし、工事開始前に間に合うよう、報告に必要な作業が終わり次第、早めの届出が推奨されています。

建物の構造で着工前に目視できない箇所があれば、目視できるようになった時点で調査し、修正報告が必要です。

アスベストの危険度に関係なく、報告が必須な工事に当てはまれば、必須となります。

アスベストは危険度(飛散のしやすさ)に応じてレベル1・2・3に分けられます。

レベル 危険度 使用箇所
レベル1 極めて高い 地下駐車場など
レベル2 高い 配管、断熱材など
レベル3 比較的低い 一般住宅の外壁材・内装材など。

雨どいにわずかに使用されていることも

大気汚染防止法第35条で、義務があるのに報告しない・虚偽報告は罰則の対象です。

30万円以下の罰金が科されます。

2023年10月から義務化されること

事前調査は下記の要件を満たす人しかできなくなります。

  • 一般建築物石綿含有建材調査者
  • 特定建築物石綿含有建材調査者
  • 一戸建て等石綿含有建材調査者

調査結果の報告義務化が与えるオーナー様への影響

事前調査が義務とは言え、調査費用はオーナー様負担となります。

よって、調査にかかる費用分の負担が大きくなります。

2021年4月からアスベストの事前調査は義務化されていました。

ところが、届出が必須でないことを理由に、調査が実施されなかったケースも見受けられました。

新築でもアスベスト使用禁止後の建材である証明を求められるなど、多くの工事で調査が必須となると予想されます。

費用負担に加え、調査のための時間がかかることも知っておくと良いです。

調査費用はアパート1棟で100万円程度です。

全ての部屋で同じ建材を使用しているなら、1部屋と共用部の調査で済みます。

よって、建物の規模で調査費用に大きな差が生じるものではありません。

ただし、調査しない場合より、工事の見積額が高くなることに変わりはありません。

原状回復リフォームだけでも報告義務に該当?具体的な例

冒頭で物件オーナーの場合、リフォーム費用が上昇することが予想されると書きました。

そのわけを具体的な例をお見せしながら解説します。

例えば、このような2DKの鉄筋コンクリート造のリフォーム工事が該当します。

下記の原状回復だけで120万円かかる見込みでした。

【項目】

  • クリーニング
  • クッションフロア張替え
  • 畳表替え
  • ウォシュレット交換
  • エアコン設置1台
  • カーテンレール取替え
  • 給湯器交換
  • 2口コンロ設置

オーナー様に原状回復を含め複数の案を提示させていただいたところ、間取りを活かしつつ大幅なリフォームをすることになりました。

 

費用は、以下の工事で約150万円。

【項目】

  • クリーニング
  • クッションフロア張替え
  • 畳表替え
  • ウォシュレット交換
  • エアコン設置1台
  • カーテンレール取替え
  • 給湯器交換
  • キッチン交換

2DKの部屋の最低限の工事(原状回復工事)だけでも報告義務の100万円を超えます。

よって、多くのリフォーム案件が調査結果報告の対象になると考えられます。

ほとんどの事業者で結果報告が必要になりそうです

アスベストの事前調査が確実に行われるよう、結果報告が義務化されています。

対象工事の規模を見ると、リフォームだけでもほとんどの案件で該当しそうです。

システムを利用し調査報告を行うこともあり、事前準備が必要です。

施工業者は早めに動いておくことが求められます。
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この記事を書いた人
星脇 まなみ
2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
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