練馬区では建物の色を自由に決められない?「練馬区景観計画」色彩基準を解説

練馬区は平成23年8月、まちづくりを進めるための計画として「練馬区景観計画」を定めました。

計画の根底に「住みやすく、ずっと住み続けたい」と思ってもらえる街にするには、美しい景観が欠かせないという考えがあります。

景観を形成するものの一つが色です。練馬区の街並み形成のポイントのひとつにも「色彩基準」の記載が。

この記事では、練馬区の建築デザインでつまづきがちな色彩基準について解説します。

練馬区が考えるまちづくり

区の基準の理解を深めるには、まちづくりの方向性の理解を深めることが大切です。

練馬区は「歩いていて心地良い、住み続けたいまち」を目指しています。

例えば、以下のような景観のある街です。

  • みどりを取り入れる
  • 大泉学園通りなど練馬区らしさを感じる場所を中心とした景観
  • ゆとりとにぎわいのバランスのとれたまち
  • 地域の歴史や文化が馴染んでいる

みどり豊かなエリアは、みどりが活きるデザインが求められ、駅前は歩きやすくても、雑多にならないよう配慮が必要としています。

区内の色彩基準について

練馬区は景観の特徴で7つの区域に分け、区域ごとに建物の高さやデザインといった景観の基準を設けています。

区域で違う基準もありますが、どの地域もみどりが映え、周囲と調和する色味が求められるのは共通します。

練馬区を「明るい」「暖かい」「穏やか」といったイメージのまちにするためです。

区内の建築物は暖色系で落ち着いたトーンが基本です。

しかし、どこから派手と感じるかなど、色の感じ方は人によって異なります。

そこで主観に左右されず適切な色を選べるよう、「マンセル表色系」という国際的な尺度で使える色を指定しています。

 

マンセル表色系とは「色相」「明度」「彩度」の組み合わせで決まる色のことです。

  • 色相:色合い。

10の基本色の頭文字をとったアルファベットと、0~10までの数値の組み合わせで表します。

たとえば5Yなど。Yは黄の頭文字です。

  • 明度:色の明るさ。数値が大きいほど明るい色です。
  • 彩度:色の鮮やかさ。数値が大きいほど鮮やか、小さいほど淡い色であることを意味します。

無彩色は彩度0です。

練馬区は下記のように外壁と屋根で使える基本色を定めています。

色相 明度 彩度
外壁 0R~9.9R 3.0以上8.5未満 4.0以下
8.5以上 1.5以下
0YR~5.0Y 3.0以上8.5未満 6.0以下
8.5以上 2.0以下
その他 3.0以上8.5未満 2.0以下(無彩色含む)
8.5以上 1.0以下(無彩色含む)
屋根 0YR~5.0Y 6.0以下 4.0以下
その他 6.0以下 2.0以下(無彩色含む)

※高さ60m以上か延べ床面積3万平方メートル以上の建築物は、外壁に明度が4.0より低い色を使えません。

 

外壁の色彩・素材は、周辺の建築物とのバランスが重視されます。

たとえば周囲に公園や街路樹があれば、みどりに馴染むよう外壁に天然素材を取り入れるなどが推奨されます。

外に出ている室外機など付帯設備やごみ置き場も、建物の景観に影響するため、目立たないよう配慮が必要です。

 

弊社は区内に「シエスタヴィラ平和台」を建設中です。

当初の配色だと区の色彩基準に適合しないため、シックな色へ変更しました。

メインカラーはグレー、ホワイト・ベージュ・ダークブルーの3色をポイントカラーにしています。

練馬区で賃貸物件を建てる際に色彩で意識すると良いこと

  • 街並みに合う配色
  • 落ち着かせる箇所と目立たせる箇所のポイントを押さえる

街並みに合う配色

下記のいずれかを取り入れると、街並みとのつながりを感じる配色になります。

  • 類似色でそろえる
  • 色相をそろえる
  • 色のトーンをそろえる

似た色を同じトーンでまとめれば、落ち着いた感じになります。

ただし、そろえ過ぎると単調になり、機械的な印象やつまらないデザインと感じさせます。

 

落ち着いた雰囲気を保ちながら建物の個性を出すには、色合いをそろえてトーンを変えるか、トーンをそろえながらさまざまな色合いを使うと良いでしょう。

たとえば暖色系でまとめつつ、明るめ・暗めと変化をつけたり、暖色系も寒色系も用いるものの、落ち着いたトーンでまとめるなどです。

色合いかトーンを変えると、日々変化する風景にもなじみやすいです。

落ち着かせる箇所と目立たせる箇所のポイントを押さえる

建物のデザインを考える際、個性的にしようと周囲にない色を取り入れたいかもしれません。

しかし、まちの景観を保護するには、周囲とかけ離れた色をメインにするのはおすすめできません。

地域の大部分の建物に使われる色は、美しさや機能面などを考えて時間をかけて形成されてきました。

同じ色でも使用する面積で印象は変わります。

大きな建物だと、派手・落ち着きすぎた色は印象が強く出るため、より慎重な色選びが求められます。

建物の用途(住宅なのか事務所なのか)や部位(屋根・壁など)で配色を変えたりすると、統一感がありつつもポイントのある外観になります。

建築物などの色を決める際、周囲の自然もポイントです。

風景になじまない色を使ってしまうと、季節と共に変わる自然の変化を味わえなくなります。

 

練馬区では、住宅の屋根や中高層部、デッキは目立ちにくい色にするよう定めています。

低層部や建物のアクセントとなる箇所、植栽などはトーンをそろえて違う色を用いても良いとされています。

建物づくりはまちづくり

練馬区は、住民と共に景観形成していくこともポイントにしています。

景観と人々の暮らしの関わりは深いです。

美しい街並みでも、暮らしやすいと感じなければ、区が目指す「住み続けたいまち」は実現しないためです。

住民目線の「ずっと住みたいまちの満足度をさらに高めるには?」という意識は、練馬区らしい街並みづくりに活かされる賃貸物件のデザインに良い影響を与えるはずです。

 

弊社は、地域の景観計画などの入念な確認を行い賃貸住宅の建築を行っております。

街の雰囲気が好きで転入したいという方からも選ばれる物件を目指します。

▼関連記事:周囲の雰囲気にマッチするように建てられた建築物は住まい以外にも!

この記事を書いた人
星脇 まなみ
2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
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