平成23年4月、東京都は「緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」を施行しました。
震災時、建物の倒壊によって道がふさがれないようにするためです。
特に重要な道路の沿道にある建築物は、耐震診断が義務化されます。
診断の結果、耐震改修などの対処が必要になることもあります。
緊急輸送道路に接する建物の耐震化を進めるため、各自治体で助成制度がつくられました。
自治体によって内容は異なりますが、本記事では、立川市の制度を紹介します。
助成制度が適用される条件
対象は、下記を全て満たす建物です。
- 特定緊急輸送道路・一般緊急輸送道路に接する敷地にある建築物
- 昭和56年6月1日施行の新耐震基準前に建築されている=旧耐震基準で建てられた
- 道路幅員の約1/2以上の高さの建築物
令和6年3月31日までに着手する下記にかかる費用が助成されます。
- 耐震診断※一般緊急輸送道路沿道の建築物のみ
- 補強設計
- 耐震改修
- 建替え(助成を受けて耐震改修した建築物と、除却した建築物は除く)
- 除却(助成を受けて耐震改修した建築物は除く)
耐震改修、建替え、除却で助成を受けるには、下記に当てはまらないといけません。
- 耐震上、非常に危険な状態
- 劣化が進んでいて、そのままにしておくと、耐震上、非常に危険な状態になると認められる
耐震改修後は、Is値0.6以上、Iw1.0相当になるように計画が求められます。
※Is値は、耐震性能を表す指標 木造住宅はIwという指標が用いられます。(Iw1.0未満は、倒壊・崩壊の危険性が高いです。)
一般緊急輸送道路沿道建築物に該当する場合、令和6年3月31日までに耐震改修工事に着手する必要があります。
緊急輸送道路沿道建築物の耐震化助成金は、他の補助金と併用できません。
建築基準法と関係法令に適さないものについては、補強設計・耐震改修時に適合させることも必要です。
助成金の計算方法と上限
いくら助成されるかは、どのように耐震化を図るかで異なります。
耐震診断の助成金額
床面積3,000平方メートル未満の建築物 | 床面積3,000平方メートル以上の建築物 |
---|---|
対象費用×100/100 | 対象費用×80/100 |
対象費用は、下記の低い方の金額です。
- 実際にかかる費用
- 床面積×基準単価で計算される基準限度額
基準単価は、以下のように設定されています。
床面積 | 1平方メートルあたりの単価 |
---|---|
1,000平方メートル以下の部分 | 3,670円 |
1,000平方メートルを超える部分~2,000平方メートル以下の部分 | 1,570円 |
2,000平方メートルを超える部分 | 1,050円 |
床面積5,000平方メートルを例に、基準限度額を計算してみます。
計算式:1,000㎡×3,670円=3,670,000円②1,000平方メートル超~2,000平方メートル以下の部分を計算
計算式:1,000㎡×1,570円=1,570,000円
③2,000平方メートル超~5,000平方メートルまでの部分を計算
計算式:3,000㎡×1,050円=3,150,000円
④総額を出す
計算式:①+②+③=8,390,000円
基準限度額が実際の費用より安いなら、8,390,000円が対象金額になります。
床面積3,000平方メートル以上の建物は、対象金額の80/100が助成されます。
床面積3,000平方メートル未満の場合、1,500,000円×階数を足して基準限度額にします。
今回の場合は、8,390,000×80/100=6,712,000円が助成金額です。
2,500平方メートル2階建ての建物の計算例を解説します。
計算結果:3,670,000円②1,000平方メートル超~2,000平方メートル以下の部分の基準限度額を計算
計算結果:1,570,000円
③2,000平方メートル超~2,500平方メートルまでの部分の基準限度額を計算
計算式:1,050円×500㎡=525,000円
④合計する
①+②+③=5,765,000円
⑤合計金額に1,500,000円×階数の金額を足す
計算式:④+(1,500,000×2F)=8,765,000円
通常の耐震診断以外にかかる費用があれば、1,570,000円まで足して基準限度額にできます。
補強設計の助成金額
特定緊急輸送道路沿道 | 一般緊急輸送道路沿道 |
---|---|
対象費用×6/6 | 対象費用×5/6 |
対象費用は、下記の低い方です。
- 実際にかかる費用
- 床面積×基準単価(基準限度額)
基準単価
床面積 | 1平方メートルあたりの単価 |
---|---|
1,000平方メートル以下の部分 | 5,000円 |
1,000平方メートルを超える部分~2,000平方メートル以下の部分 | 3,500円 |
2,000平方メートルを超える部分 | 2,000円 |
耐震改修・建替え・除却の助成金額
特定緊急輸送道路沿道 | 一般緊急輸送道路沿道 | ||
5,000平方メートル以下の部分 | 5,000平方メートル超えの部分 | 5,000平方メートル以下の部分 | 5,000平方メートル超えの部分 |
対象費用×9/10 | 対象費用×55/100 | 対象費用×5/6 | 対象費用×50/100 |
対象費用は、下記の低い方です。
- 実際にかかる費用
- 床面積×基準単価(基準限度額)
基準単価は、マンションに該当するか、マンションが免震工法か否かで異なります。
立川市は、以下を満たす建築物をマンションと定義しています。
- 耐火建築物または準耐火建築物の共同住宅
- 延べ面積1,000平方メートル以上
- 地階を除いた階数が原則3階以上
建築物 | 1平方メートルあたりの単価 |
---|---|
一般工法のマンション | 50,200円 |
免震工法のマンション | 83,800円 |
マンション以外の住宅 | 34,100円 |
床面積は、耐震改修は改修後、建替えと除却は工事前の面積で計算する
耐震改修・建替え・除却の基準限度額は、上限があります。
建築物 | 1棟あたりの上限額 |
---|---|
一般工法のマンション | 5億200万円 |
免震工法のマンション | 8億3,800万円 |
マンション以外の住宅 | 3億4,100万円 |
基準限度額は以下のように計算します。
- 一般特定緊急輸送道路沿道にある2,000平方メートルの一般工法のマンションを建替えた場合
計算式:2,000㎡×50,200円=1億40万円
- 基準限度額が実際の費用より安い場合
計算式1億40万円×5/6≒83,666,000
1,000円未満の端数は切り捨て
助成を受けるまでの流れ
- 申請前に住宅課窓口に相談する
立川市では、助成を受ける前に市に相談するようお願いしています。緊急輸送道路沿道建築物の耐震化助成制度 | 立川市 - 助成金の交付申請
必要書類もあわせて提出します。 - 書類審査後、交付決定通知書の受け取り
- 業者と契約締結※業者との契約は、必ず交付決定をお知らせされた後に行ってください。
- 耐震診断や工事の開始
- 完了届の提出
- 書類審査と現場確認後、助成金額の決定通知書の受け取り
- 交付請求
- 助成金の受け取り
助成を受けるまでに必要な書類
交付申請する前や工事完了後など、提出が必要な書類はいくつもあります。
提出するタイミングごとに必要書類をまとめました。
※下記以外に、追加で書類の提出を求められる場合もあります。
申請前に提出が必要な書類
- 緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業助成金全体設計承認申請書
- 案内図
- 配置図
- 工程表(年度ごとの出来高が分かるもの)
- 見積書(年度ごとの支払額が分かるもの)
総額を含め、全体設計に変更があった場合の提出書類
- 緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業助成金全体設計変更承認申請書
- 工程表(変更後の年度ごとの出来高が分かるもの)
- 見積書(変更後の年度ごとの支払額が分かるもの)
業者との契約前に提出する書類
- 緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業助成金交付申請書
- 土地および建物の全部事項証明書、または、所有権を証明する書類
- 確認通知書の写し、または、建築年月日の分かる書類
- 改正耐震改修促進法における耐震診断義務付け対象建築物であることの確認書の写しか、立川市建築物の耐震改修促進法施行細則(平成13年立川市規則第34号)第9条に規定する耐震診断実施結果報告書の写し※特定緊急輸送道路沿道建築物の場合
- 沿道建築物と分かる書類※一般緊急輸送道路沿道建築物の場合
- 所有者全員の同意がある代表者承諾書※複数人で所有している場合
- 耐震診断書(概算書)および評定書の写し※耐震診断以外の助成を受ける場合
- 診断者の講習会受講証明書の写し
- 耐震化推進条例第10条第1項に規定する者であることの証明の写し
- 消費税仕入税額控除を確認できる書類
耐震診断・工事の内容にあわせて、以下も提出が必要です
耐震診断
- 案内図
- 配置図
- 各階平面図
- 診断計画書
- 診断見積書
補強設計
- 設計見積書
- 設計工程表(概要)
耐震改修
- 土地の所有者の承諾書※土地と建物の所有者が異なる場合
- 工事に関する設計図書
- 補強設計結果報告書(概要書)
- 補強計画にかかる評定書
- 工事見積書
- 工事工程表(概要)
建替え
- 土地の所有者の承諾書※土地と建物の所有者が異なる場合
- 工事に関する設計図書
- 工事見積書
- 工事工程表(概要)
除却
- 土地の所有者の承諾書※土地と建物の所有者が異なる時
- 工事見積書
- 工事工程表(概要)
契約から耐震診断・工事開始とあわせて提出する書類
- 緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業助成金着手届
- 契約書の写し
- 工程表
助成決定後に計画に変更がある場合提出する書類
助成金額が変わるか変わらないかで必要な書類が違います。
助成金額が変わらない範囲内で工事内容などに変更が生じる場合
- 緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業助成金事業内容変更届
- 申請内容の変更を示す図書
たとえば工程の変更などのケースが当てはまります。
助成金額が変わる場合
- 緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業助成金変更申請書
- 申請内容の変更を示す図書
- 変更契約書の写し
耐震診断・工事完了後に提出する書類
- 緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業助成金完了届
助成を受ける内容にあわせて、下記も必要です。
耐震診断 | 補強設計 | 耐震改修・建替え・除却 | ||
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消費税の申告で助成金にかかる消費税仕入控除税額の確定後に提出する書類
- 緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業助成金消費税仕入税額控除報告書
助成金の請求に必要な書類
- 緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業助成金請求書
- 債権者登録書兼支払金口座振替依頼書
立川市で緊急輸送道路沿道の物件の耐震化を図る方は補助金の申請を!
緊急輸送道路沿道の建物の耐震改修や建替えは、補助金をもらえます。
ただし、申請が必要です。
立川市内に補助金対象の物件を所有する方は、まずは市にご相談ください。
本記事では、行政の資料を元に分かりやすくまとめたものです。スムーズに助成を受けられるよう、本記事も参考にしてみてください。
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- この記事を書いた人
- 星脇 まなみ
- 2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
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