住宅の外壁をリフォームするにあたって採用されることが多い、「カバー工法」。
外壁の劣化状態によってはおすすめな工法ですが、知識を持たないまま取り入れると後悔することも…。
そこで今回は、カバー工法とはどんな工法なのかを種類と共に解説するだけでなく、メリット・デメリットやカバー工法を採用するべき例もご紹介します。
「カバー工法ってどんなやり方なんだろう?」「カバー工法について気になるけど、調べてみても難しくてよくわからない…」と思っている方は、ぜひご覧ください。
目次
カバー工法の概要と種類
「カバー工法」とは、外壁工事における手法のひとつです。
既存の外壁をそのままにして、上から新しい外壁材を重ねることでデザインを一新させることができます。
カバー工法に使われる素材は、主に窯業系サイディング・金属サイディング・樹脂サイディングの3種類です。
金属サイディングはガルバリウム鋼板やエスジーエル鋼板、アルミニウムといった軽量なものが使われます。
▼サイディングの種類別解説はこちら
素材の種類と特徴の違いは、以下の通りです。
素材 | 特徴 |
窯業系サイディング |
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ガルバリウム鋼板 |
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エスジーエル鋼板 |
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アルミニウム |
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樹脂サイディング |
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外壁カバー工法のメリット・デメリット
カバー工法は他の工法にはないメリットがある一方で、デメリットも存在します。
メリット
- 断熱性や遮音性が向上する
- コストパフォーマンスが高い
- 外観のデザインを一新できる
カバー工法は既存の外壁に新しい外壁材を重ねるため、その間に空気層ができます。
空気層があることで、水分を含んだ暖かい空気や冷たい空気を遮断するため室内の温度を快適に保てるのです。
外壁に厚みが増すので、遮音性の向上にもつながります。
また、カバー工法では張り替えリフォームのように既存の外壁を剥がす必要がありません。
そのため施工費用・期間を抑えつつ、素材からデザインまで外壁を一新させることができます。
デメリット
- 壁の内部に結露が発生することがある
- 建物の重量増加に注意が必要
- 外壁の状態や建物によっては採用できないことがある
カバー工法を行うと、既存の壁と新しい壁の間にある空気層に空気中の水分が閉じ込められ、結露となってしまうことがあります。
ただし壁の中に空気の通り道となる感覚をつくることで、このデメリットを回避することが可能です。
また、外壁材を新たに増やせば建物の総重量も増加します。
総重量が増加すると地震による倒壊のリスクが高まるため、できるだけ軽量な素材を使うと良いでしょう。
カバー工法は、すべての劣化状態や建物に対応できるリフォーム方法ではありません。
対応ができない例と対応できる例については、次項にて詳しく解説します。
外壁カバー工法で対応できない例・できる例
外壁をカバー工法でリフォームできる場合とできない場合があるため、あらかじめチェックしておきましょう。
対応できない例
- ALC(軽量気泡コンクリート)外壁である場合
- 外壁の劣化が著しい場合
- 耐火構造や防火構造の基準がある建物
既存の外壁がALC外壁である場合、強度が確保できないことからカバー工法による施工が不可とされています。
また、既存の外壁の劣化状態がひどい場合は内部補修が必要になるため、カバー工法だけで補修しきれないことが多いです。
この場合、既存の外壁を取り除く「はき替え工事」を行うことになります。
集合住宅や商業地域内にある住宅においては、「耐火構造」や「防火構造」の基準が定められています。
カバー工法で使う外壁材の中にはこの基準を満たせないものもあるため、注意しましょう。
▼「耐火構造」「防火構造」など制限のもととなる地域区分はこちらで詳しく
対応できる例
カバー工法は、以下のような劣化が見られた場合のリフォームに適しています。
- クラッキング(ひび割れ)
- チョーキング現象※
- 塗装の膨らみ
- 塗装の剝がれ
- 洗浄しきれないコケやカビ
- 表面的な穴や欠け
※チョーキング現象:「白亜化現象」とも呼ばれる、外壁の表面に白い粉が浮き出る現象
また、コストをかけずに建物の外観を変えたい方、断熱性や遮音性をより高めたい方にもおすすめです。
カバー工法で失敗しないためには特徴をよく理解しておくこと!
既存の外壁に新しい外壁を重ねるというカバー工法だからこそ、他の工法にはない魅力があるとお分かりいただけたでしょうか?
ただし、カバー工法でも対応しきれない例が存在することには注意が必要です。
お持ちの賃貸住宅のリフォームなどにカバー工法は適しているのかを考えながら採用を検討してみてください。
▼サイディングの種類別解説はこちら
- この記事を書いた人
- 浦野 瞳
- 様々なジャンルで執筆経験があるフリーランスWEBライターです。 執筆時はリサーチにリサーチを重ね、複雑な不動産関係の知識も分かりやすくお伝えしています。 読者の皆様に、「痒い所に手が届く記事」と感じていただけていれば幸いです。 住宅やインテリアの情報に対しては特に関心が強く、情報の正確性を高めるため個人的にも勉強をして知識をつけています。 実際に賃貸暮らしを続ける中での経験・所感も活かし、オーナー様・入居者様どちらの視点も考慮しながら情報を発信いたします!
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