不動産に関する仕事の中には、宅地建物取引士(宅建士)だけができる仕事があります。
試験に合格し専門的な知識を持っていることを証明された人が、宅建士になることができます。
本記事では、宅建士だけができることやメリットを紹介します。
申し込み、試験の概要と難易度、更新など合格後に必要なこともわかりやすく解説します。
目次
宅地建物取引士とは
土地・建物など不動産に関する知識を持ち、専門的な知識が必要な業務ができることを証明する国家資格です。
不動産売買や貸借の仲介などを営む事業所は、事務所ごとに従業員5人につき1人は専任の宅建士の設置義務があります。
たとえば7人の従業員のいる事務所には、最低2人の宅建士が必須ということです。
専任の宅建士は他の事務所と兼業していない人しかなれません。
大金が動く不動産取引は、トラブルに巻き込まれるリスクも高いです。
たとえば、賃貸住宅を建築したいのに、住宅を建てられない土地を購入してしまうなどです。
トラブルに遭わないためには専門知識が必要です。
安心した取引のお手伝いのために、知識を持つ宅建士がいます。
宅地建物取引士だけができること
- 重要事項説明
- 重要事項説明の書面に記名・押印
- 契約書面の記名・押印
上記3つの契約に関わる重要な業務は、宅建士しかできません。
法律など専門的な知識が求められるためです。
重要事項説明は、物件情報や法律上の規制などを説明することです。
不動産取引の必須事項です。
宅地建物取引士の資格をとるメリット
- 契約まで1人でできる
- 一生使える資格を取得できる
- 他の金融系・法律系資格取得のきっかけになる
契約まで1人でできる
従業員5人以下の事務所なら、宅建士が1人いれば事業はできます。
内見の案内は資格の有無に関係なく行えます。
ところが、案内した人が資格を持っていないと、重要事項説明や契約締結は他の資格を持つ人に任せないといけません。
一方、資格があれば物件案内から契約まで一貫して担当できます。
できる仕事が増え、スキルアップにつながります。
一生使える資格を取得できる
宅建士は衣食住に関わる資格です。
故に、需要がなくなることは考えにくいです。
宅建士の資格は金融機関に勤める人など、不動産業界以外の人も取得します。
お金にまつわる法律を学べて、高い専門性を持つことを証明できるためです。
不動産に関する幅広い知識を学べることから、オーナー様で取得している方もいます。
宅建士は、法律に関わる仕事に活かせる資格と言えそうです。
他の金融系・法律系資格取得のきっかけになる
宅建士は国家資格なので、簡単に受かるものではありません。
しかし、他の国家資格と比較すると難易度は低めです。
宅建士と、似ている国家資格の令和3年度の合格率を比較してみます。
資格 | 宅地建物取引士 | 社会保険労務士 | 司法書士 |
---|---|---|---|
合格率 | 17.7% | 7.9% | 5.1% |
司法書士などの難関資格にチャレンジしたい方は、法律を勉強できる宅建士からスタートすると取りかかりやすいかもしれません。
日本国内に住む方なら年齢・学歴関係なく受けられるのも、挑戦しやすい要因です。
宅地建物取引士試験について
重要事項説明などは難しい用語がたくさん出てきます。
よって、お客様にわかりやすく丁寧に説明できることが大切です。
試験概要 | |
試験方式 | 50問マークシート方式 |
試験時間 | 2時間 |
出題範囲 |
※根拠は、試験を受ける年度の4月1日現在施行の法令など |
受験料 | 8,200円(令和4年現在) |
受験手続きから合格までの流れ |
1,試験案内の掲載・配布
例年7月1日からインターネットで公表、もしくは、都道府県指定の場所で配布します。 2,申し込み インターネットは7月中旬まで、郵送は7月下旬までの受け付けです。 3,8月下旬頃、試験会場の通知 4,受験票が送付される 例年9月末頃です。12月受験の方は11月に郵送されます。 5,試験 ※原則、現在住んでいる都道府県での受験です。 ※例年10月第3日曜日に実施しています。 ただし、令和2年からは新型コロナ感染拡大防止のため、12月と分けて実施されています。 令和4年は12月第3日曜日の実施も決定しています。 6,合格発表 ※10月受験の場合11月下旬 ※令和4年度試験では12月受験は翌年1月末頃 7,合格証書が送付される |
宅地建物取引業に就く方は試験で有利になる!?
登録講習を受講し登録講習修了試験に合格すると、試験を5問分免除されます。
講習は、宅地建物取引業に従事する方のみ受けられます。
免除を受けるには、講習講習修了者証明書が必要です。
講習申し込みから証明書交付までのスケジュールを考えると、受験する年の3月までには講習への申し込みを済ませておく必要があります。
1,講座への申し込み
2,2ヶ月ほどの通信教育
3,スクリーニング受講(2日間の講座と修了試験)
4,試験合格後、約1週間で登録講習修了者証明書の交付
合格後に必要な手続きなど
重要事項説明など宅地建物取引士しかできない業務をする方は、試験合格後に宅地建物取引士証の取得手続きが必要です。
試験合格後から取引士証交付までの流れ |
1、試験合格
2,過去10年以内に2年以上の実務経験があれば、合格した試験地の都道府県知事へ登録申請 ※実務経験のない方は、登録実務講習修了後に登録申請 3,宅地建物取引士証の交付申請 |
登録や取引士証の交付には費用がかかります。
- 登録申請:37,000円
- 宅地建物取引士証の交付:4,500円
※令和4年現在
登録実務講習を受ける方は、別途費用がかかります。
料金は講習を受ける機関で異なります。
試験に合格し、実務経験があるか講習を受けた人でも、宅地建物取引業法第18条に該当すると登録できません。
たとえば、破産手続開始決定を受けて復権を得ていない、禁固刑以上の刑の執行を終えて5年を経過していないといった人です。
必要になったタイミングの手続きで問題ありません。
取引士証の有効期間は5年です。
更新を希望する場合、有効期間の終わる6ヶ月前に、都道府県知事指定の団体の法定講習の受講が必要です。
受講料12,000円、更新手数料4,500円がかかります。
宅地建物取引士の資格はスキルアップに活かせる資格のひとつ!
宅地建物取引士は幅広い人がチャレンジしやすい国家資格です。
しかし、簡単というわけではないので、しっかり勉強してから試験に臨まないと太刀打ちできません。
宅建を受けようと思ったら、テキスト代や予備校・通信講座のための料金、模試の受験料などもかかります。
スケジュール・費用面で、計画的な準備が大切です。
宅建士の資格があれば、「契約」という責任感のある仕事に携われます。
法律に関する知識は持っていて損しません。
「スキルアップしたい」「賃貸経営や不動産投資に興味がある」という方は、挑戦してみる価値があります。
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- この記事を書いた人
- 星脇 まなみ
- 2016年からフリーランスでライターとして活動しています。 主に住まい・暮らし・生活に関する記事を制作してきました。 住みやすい街や今後熱くなりそうな街や都市開発、資産運用への関心が強いです。 住宅設備で1番好きなのはトイレ。外出先でもメーカーやデザイン、使い勝手が気になってしまいます。
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