ほぼ新宿のれん街、街並みの変化をリノベーションx古地図の視点で見てみる

2022年代々木駅から徒歩1分、新宿駅から徒歩5分の場所に新しい飲食店街ができました。

シャンパンが売りのお店からイタリアン、鰻まで、食にこだわりのある方にもよだれの出るラインナップ。

食事だけではなく、古い建物をリノベーションした飲食店街で建築や文化の視点からも見どころのある場所です。

この記事では、「ほぼ新宿のれん街 」「ほぼ新宿のれん街 倉庫別館」をもっと楽しめる情報を建築視点でお届けします。

ほぼ新宿のれん街とは?

ほぼ新宿のれん街 倉庫別館は、日本初の倉庫型横丁として古民家10棟と倉庫を丸ごとリノベーションして飲食店街に作り替え2022年3月に誕生しました。

2017年に古民家をリノベーションした「ほぼ新宿のれん街」がオープン。「ほぼ新宿のれん街 倉庫別館」が2022年に規模を拡大してのオープンとなっています。

該当する東京都渋谷区千駄ヶ谷5丁目20番地は2022年8月現在、第2種住居地域に指定され 床面積10,000㎡以下の店舗が存在しても良い地域です。床面積10,000㎡というとKITTE丸の内くらいの広さです。

新築アパートの計画・建築に関わる私たちとして気になるのが、やはり大規模リノベーション、「のれん街」という街を作るというアイデアです。

リノベーションとは、昔からあるものを使いながら現代に合うように価値を上げて作り上げることです。

どのように作り替えたのか気になります。上空から見てみましょう。

60年代から2020年へ空から見る

まず、街の様子がどのように変わったのか、地理院地図の提供する昔の地図を見ていきます。

地理院地図とは、地形図、写真、標高、地形分類、災害情報など、日本の国土の様子を発信するウェブ地図です。(地理院地図websiteより)

現在のすがた

こちらが現在の姿です。

2019年のすがた

こちらが2019年の地図。

黄色で囲んだ右が「ほぼ新宿のれん街」、左が「ほぼ新宿のれん街 倉庫別館」です。

2019年の時点で「ほぼ新宿のれん街」はオープンしているので右の黄色の囲み部分は2022年現在の姿とほぼ同じです。左の四角「ほぼ新宿のれん街 倉庫別館」該当部分を見てみると、更地になっているように見えますね。一度取り壊して建て直したのでしょうか。


取り壊して作ったのか、右の四角部分はどの時点からある建物なのか確かめるためにもっとさかのぼって見てみましょう。

1961年-1969年のすがた

こちらは、地理院地図で住宅がはっきり見れる一番古い1961年-1969年の写真です。

左側の黄色四角「ほぼ新宿のれん街 倉庫別館」、こちらは大きな倉庫か大邸宅のような建物が建っています。

右側の四角部分「ほぼ新宿のれん街 」、ここは現在では3軒家が横並びになっているのですが、この時点では真ん中に1軒(民家でしょうか)右端に長屋のような倉庫のような建物があります。

今とは異なる景色だったことが想像できます。

1984年~1986年のすがた

ちょっと時間を現代へ。1984年~1986年の様子です。

右の四角「ほぼ新宿のれん街 」の3軒が確認できます。このあたりの時代から建っている建物なのですね。もしこの写真に写っている建物をスクラップアンドビルド方式で壊していなければ、築40年ほどと推定できます。

築40年の建物というと、まず窓枠など強度の必要な部分が鉄製に変わっている建物であるはずです。

アルミサッシは1932年に誕生し、60年代には普及しています。

「ほぼ新宿のれん街 」「ほぼ新宿のれん街 倉庫別館」レポ

実際の「ほぼ新宿のれん街」に行って来ました。

この大きな建物が「ほぼ新宿のれん街 倉庫別館」です。倉庫をリノベーションした建物の中に複数の飲食店が入っています。

外壁に見えるトタンは昔日本でよく建築資材として使われていた部材です。現在では、トタンの遮蔽性や遮熱性のデメリットを克服できるガルバリウム鋼板がスタンダードとして使われています。

外壁の色味を見ると、もともとの倉庫の経年劣化度合いを残しながらダメージの大きい場所は補修されているのが分かります。

渋谷区という立地にマッチするストリートなグラフィティ装飾に照明がすてきです。

最初に入ったのがこちら。「う福」

古民家をリノベーションした建物です。

「ほぼ新宿のれん街」の存在を知ったのは社長におすすめされたからなのですが、その時にこの鰻がおいしかったらしいのでおすすめにのってきましたよ。

カリカリの皮目にふわふわのおいしい鰻の串が食べられます。うなぎなのでお財布が心配かなと思いきやべらぼうな金額ではないので安心して入ってOKです。

暗くなると雰囲気が出ます。電球色のようなオレンジ寄りの照明で温かみのある街並みです。

古屋をそのまま使うからこその経年感、味が出ていいですよね。ジブリみを感じます。

azzurro520(炭火・スパニッシュ料理のイタリアンバル)の内装がステキでした。

色味を見ると梁や柱は元の建物を使っているように思います。奥に見えるサッシはなんと木枠。だいぶん古い建物に違いありません。

公式サイトを見ると築60年だそうです。60年代というと植木等さん主演の喜劇映画「ニッポン無責任時代」が上映されていた時代です。若者像が現代とは違いすぎる!

上記1961年-1969年のすがたで発見した既に建っていた1軒だとしたら、アルミサッシ普及前の1960年以前に建てられたものかもしれません。

金箔が埋め込まれていて美しいタイルです。

モザイクタイルは昭和時代に流行し住宅にも多く取り入れられていました。

しかし、現代では国内の生産工場が減っていることや輸入タイルが海を越えて入ってきていることもあり最近ではなかなか見ることがありません。古い家を解体する際にたまに見つかる程度です。

もしかしたらこのテーブルも古屋から発掘したものではないのかもしれません..それくらい貴重です。

中は入り組んでいるので、迷う方もいるかも。

そんなときの地図も景色に合った雰囲気です。

リノベーションの可能性

写真が苦手なのですが、そんな私でもライティングのおかげでうまく写ってくれました。西武園ゆうえんちが好きな人は絶対に好みかと思います。

ごはんを食べに行くだけでもおいしい体験ができる場所です。どのように作り替えたのか過程を想像してみることでより訪問先が深く楽しめます。

民家が近く、酔って騒がしくするとせっかくの良い空間がなくなってしまう可能性もなきにしもあらずなので飲みすぎには注意したいですね。

居酒屋街の雰囲気を写真として持っておきたい方にもよい場所だなと思います。

この記事を書いた人
賃貸知識BANK編集部
不動産市場や投資に関する情報を専門的な視点で解説しています。資産形成や投資戦略に役立つコンテンツを実務的な目線でお届けします。
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