「賃貸経営をやっているけれど手間やコストをできるだけ抑えてうまく収入を上げる方法はないだろうか」という方は多いのではないでしょうか。
アパート経営では、建築費やメンテナンス費用のかけ方によって収益が上がったり下がったりするのはもちろん、入居者の入れ替わりの頻度によっても収入に差が出ます。
というのは、短期入居で入居者の入れ替わりが多いのか、長期入居で入れ替わりが少ないのかで、募集活動に必要な費用やリフォーム費用が変わってくるからです。
そこで今回は、不動産投資をされている方のために長期入居者獲得と収入のノウハウを解説します。
※今回は、賃貸住宅の契約形態で一般的な普通借家契約、契約期間が2年、管理委託契約有の場合で解説いたします。
目次
入居期間は長い方が良い?短い方が良い?
賃貸経営では、「入居期間は長い方が良い」と一般的に言われます。
それは、入居者がいる間は空室になり収益が下がることを気にしないでも良いという精神的な安心感があるからです。
物件の立地、間取りにもよりますが一度退去になると次の入居者が決まるまで約1~3か月、引っ越しの閑散期であれば半年かかることもあります。
その間は空いている部屋の分賃料収入が減るため、長期で空室となると収益に大きな打撃になり得ます。
融資を返済しながら経営している方にとっては、返済に影響が出ることもあるでしょう。満室経営をはそれだけに重要です。
かといって、長期入居すぎるのもNGです。
収支バランスの良い入居期間は3年
長期入居を目指した方が良いと言っても収益に良くない長期入居があります。
それが6年や8年で入居者が交代する場合です。
・3年交代
・何度も更新し10年以上の長期入居
理由は2つあります。
①長期入居すぎると原状回復費用のオーナー負担割合がかさむため
②入居期間が短いと新規入居に係る初期費用が薄まらないため
理由①長期入居すぎると原状回復費用の負担割合がかさむ
現在、退去時の原状回復費用は国土交通省よりガイドラインが出ており記載に則って請求を行うように定められています。
ガイドラインでは、住宅設備の経過年数によって借主負担と貸主負担の割合が図のように決められており、設備の経過年数により入居者負担分とオーナー様負担分で分けて支払いが行われます。
例えば、壁紙は耐用年数6年と決められており、6年の耐用年数の設備では賃借人負担割合が0%となるためオーナー側負担が100%になります。
6年の長期入居の場合、原状回復費用が膨らむのです。
耐用年数が8年の設備でも同じく貸主負担割合が大きくなり原状回復費用がかさみます。
負担割合を入居者と分け合うことのできる3年ごとの入れ替わりが原状回復費用が膨らみにくい入居期間です。
理由②短期入居は新規入居に掛かる初期費用が薄まらない
短期入居が重なると、新規入居に掛かる初期費用が入居者入れ替えの度に何度もかかります。
言い換えると、新規入居の際に掛かる初期費用が年月で薄まらないということになります。
項目 | 内容 | コスト |
リフォーム費用 | 部屋の修繕費用 |
部屋の状態、入居期間によって変動
|
新規成約手数料 | 新規入居者が決まった場合管理会社に払う費用 |
約1か月 ※管理会社による
|
広告費(AD、フリーレント等) | 入居者募集に掛かる費用 | 募集内容による |
※AD:入居者を決めた会社に支払われる成約ボーナス。ADの多い物件は積極的にお客様への紹介がされる傾向にある。〇か月単位で設定される。
※フリーレント:家賃を設定した金額分免除するキャンペーン。〇か月単位で設定される。
例)家賃が10万円の物件で、広告費に10万円、リフォーム費用に10万かかった場合
計算式)①新規成約手数料+②広告費+③リフォーム費用=10万円+10万円+10万円
成約時のコスト=30万
入居期間 | 成約時のコスト | 居住期間に応じかかった費用を割ったもの | |
1年 | 30万 | 30万/12か月 | 年2.5万 |
2年 | 30万 | 30万/24か月 | 年1.25万 |
3年 | 30万 | 30万/36か月 | 年0.8万 |
: | : | : | : |
入居者が入れ替わるたびに発生する費用なので、入れ替わりで何度も支払うより長期入居を目指しできるだけ支払う回数を減らした方が経済的です。
長期入居で得られるメリット、利点
長期入居で得られるメリットは3つです。
①空室で収入減になる不安がない
②募集活動をしなくてよいため入居者募集費用、新規成約手数料が掛からない
③入居者が入れ替わらないので原状回復費用がかからない
入居をしている限り募集活動を行う必要がない、収入減にならない安心感が一番の利点でしょう。
退去の原因は何?
経済的で安心感のある長期入居を目指すには、退去の原因を学ぶことが重要です。
退去の原因には避けられるものと避けられないものの2つがあります。
【避けられないもの】
就職、転勤、結婚、同棲など生活環境が変わる場合
【避けられるもの】
騒音、住環境が清潔ではない、顧客対応が悪い、不具合が起きた場合に修理がされない、対応スピードが遅い など
転勤や結婚など生活環境の変化による引っ越しは私たちの努力ではコントロールができません。
しかし、顧客対応の悪さなど原因が管理する側にある場合は対応を改善することで早期退去を避けることができます。
避けられる退去をできるだけなくしておけば長期入居の可能性が高まります。
長期入居になる条件のコツ
長期入居を獲得する条件のコツは、契約の仕方と更新の仕方にあります。
コツ①契約期間を延ばす
一般的な契約期間は2年ですが、これを3年、4年と長く設定する方法です。
私たちも賃貸管理業務を行っていますが、契約更新をきっかけとして引っ越しを考える方は多いです。
更新の年数を長くすることできっかけが起きない状況を作ることができます。
コツ②更新料を相場より安くする
一般的な更新料は、1か月ですがこれを1か月より安くする方法です。
入居者心理として、住み続けるためだけに支払う更新料がもったいなくて引っ越しをする方もいらっしゃいます。このような場合、引っ越しに掛かる費用が比較されます。
住み続けたほうが引っ越しをするよりお得と感じられれば長期入居につながります。
長期入居になる管理のコツ
長期入居を獲得する条件のコツは、顧客対応と住みやすさにあります。
コツ①不具合対応を早くする
日々使う住宅設備ですので、何かしらの不具合が起き得ます。
不具合が起きてしまうと入居者様は不満を感じるものです。
しかし、不具合が起きた後にすぐ対応することで入居者満足度を高めることもできます。
不具合が起きた際のスピードが遅い管理会社は多く、不満を感じながら住んでいる方は多いです。
他と違うよい不具合対応は長期入居につながります。
コツ②住環境を清潔に整備する
日々清潔に住むことができる環境づくりを行うことは長期入居につながります。
特に不満が起きやすい箇所がゴミ置き場です。
植栽を剪定し、ゴミボックスが汚れた場合は清掃をし、ごみの出し方が悪い場合は注意喚起をして入居者自身が清潔に使うことができるようにすることで清潔な環境が作れます。
日々の清掃をきちんと行い入居者が快適に過ごすことのできるように環境整備をしておくと毎日使う入居者に不満は起きません。
コツ③入居者が相談しやすい環境を作ること
入居者の使いやすい連絡手段を整えておくと困ったときに連絡をもらいやすくなります。若年層の間では電話など声でのやりとりよりもLINE等チャットなど文章でのやりとりのほうが心理的障壁が低いです。
小さな不満が積もり積もって大きな不満へとなってしまいます。不満が小さいうちに相談してもらえるような体制を整え、対処しておくことで満足に過ごせます。
コツ④時間外も24時間365日対応できること
不具合は24時間365日起き得ます。
本当に困ったときに対応してもらえないと不満を感じるものです。
ご自身や管理会社が24時間対応をせずともコールセンターのサービスを付帯することで365日24時間対応が可能です。
コツ⑤愛着を感じられる環境を作る
入居者はきちんと管理された物件を好みます。
物件が清潔に保たれておりさらに季節ごとに物件をデコレーションをするなど文化的な環境を整えることは物件に愛着を持ってもらえる工夫の一つです。
引っ越したくないと思ってもらえれば長期入居につながります。
コツ⑥入居時にお祝いを渡す
引っ越しの当日は、物を移動するだけで大変で一日が終わってしまうものです。
お祝い品としてレトルト食品などをお渡しすると忙しい当日の負担が軽くできるかもしれません。
人間関係と同じで物件の印象も第一印象のインパクトが大きいものです。
入居者様への気遣いで少しでもいい気持ちで住み始めていただくことができます。
コツ⑦入居者向けのサービスを行う
入居者向けに他の物件にはないサービスを行い差別化をする方法です。
サービスが入居者のニーズに合致すれは、他の物件に引っ越しを検討しない長期入居につながります。
費用がかかるけど効果のあるサービスとして、ごみ袋の配布、物品の貸し出しなど、できることは無限大です。
コストパフォーマンスを考慮してサービスを選ぶことをお勧めします。
長期入居のカギは良い顧客対応
賃貸経営では、入居期間は長い方がいいです。
原状回復費用の負担割合と新しい入居者が決まった際にかかる費用とのコストバランスがより良いのは3年交代の長期入居です。
長期入居者を確保するために重要なのは顧客対応の良さ、これが一番の効果があります。
物件の管理体制にもこだわってみると長期入居のうまみ、収益アップに近づきます。
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- この記事を書いた人
- 賃貸知識BANK編集部
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