土地活用の前に確認する10の建築制限を解説!用途地域、建ぺい率、斜線制限など

住宅街にぽつんと工場が建つことがないのはどうしてでしょうか。

それは土地が人の住みやすいように国や自治体によって利用方法が制限されているからです。

制限は建築基準法や都市計画法をはじめとする法律や、地方自治体が独自に制定する条例などによります。

別の視点に切り替えると、これは土地活用をしようとする際の選択肢がいくつかに決まってくるということでもあります。

本記事では、土地活用を検討する際に確認する土地利用、建築の制限について解説します。

土地活用の相談に向かう前に土地/建物の制限を勉強しておくと希望の活用方法を固めるヒントとなることも。

10の土地、建物の制限

土地の使用方法は、国や自治体によって決められており建てられるものには制限があります。

制限には、用途、建物の高さ、階数、戸数、面積などがあり、法律に則った建物を計画することで建築確認を受けられます。

①用途地域

まず確認する代表的なものが用途地域です。

日本の土地の利用方法は国により約13種類に分けられておりそれを「用途地域」と言います。

第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域

第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域

第一種住居地域 第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域

近隣商業地域、商業地域

準工業地域、工業地域、工業専用地域

区分によって建てられる建物には制限がかかっています。

例えば工業地域には診療所や派出所は建てられますが、住宅を建てることはできません。

②斜線制限や高さ制限、高度地区

建物の高さは、前面道路や隣地との日当たり・通風を確保するために制限があります。

特に共同住宅建設で気を遣うのが高さ制限、斜線制限、高度地区です。

高度地区は、建物の高さに制限がある地区のことで共同住宅を多く扱う当社の営業エリアでは制限の第2種にあたるケースが多く、これらは土地により該当する制限が異なります。

・道路斜線制限:道路に面した建物の一定の高さを制限しているもの

・隣地斜線制限:隣地の日照・通風・採光に支障をきたさないよう建物の高さを制限するもの

・北側斜線制限:建物北側の土地の日照を確保する為に建物の高さを制限するもの

※制限が重なった場合厳しい方の制限が適用されます。

③建ぺい率、容積率

建ぺい率とは、「敷地に対して真上から見た建物の面積の割合(建築面積)」のこと、

容積率とは、敷地面積に対する延べ床面積の割合のこと です。

地域ごとに建ぺい率と容積率には上限が定められ、その範囲内で建物は計画されます。

例えば、100㎡の土地で住宅を建てる場合、建ぺい率が80%に制限されている地域にある土地だとしたら建築面積が80㎡までに収まるように設計する必要があるといった具合です。

④防火の制限

火事の延焼を防いだり緊急車両がスムーズに通行できるようにするため、延べ面積、建物の階数によって制限が設けられています

地域によって「防火地域」「準防火地域」「法22条区域」と区分けがされ、必要な防火対策の度合いが定められています。

該当地域によって、建物のどの部分の部材が不燃材料を使わなければならないのかなど部材選びにも関わります。

例えば、「外壁・軒裏は防火構造にして、屋根を不燃材料でふき、開口部に防火設備を設けることが条件」という風に具体的に決められています。

・「防火地域」「準防火地域」:都市計画法において火災が発生した際に被害が拡大することを防ぐための規制が定められた地域

・「法22条区域」:防火地域や準防火地域以外の木造住宅地

⑤接道の制限

土地の道路への接し方によっても制限がかかっています。

例えば、「法42条2項道路」は幅4メートル未満の道のうち、行政に指定された道のことで「みなし道路」とも呼ばれます。

法42条2項道路は、道路の中心から2メートルのエリアには、建物を建てることができないためその分後退して(セットバック)建築する必要があります。

⑥緑化計画

敷地内に植えなければならない植物の量が定められている地域もあります。

これは緑化計画と言い、地域によって制限の度合いが異なります。

土地の面積や地域ごとの基準により「緑化計画」「開発許可」申請を行い、地上、建物上、接道部それぞれに定められた種類の植栽を決まった本数植える必要があります。

例えば、「敷地面積が5,000㎡未満の場合、地上部は(敷地面積-建築面積)×0.3以上の面積を樹木により緑化すること」というように決められています。

⑦消防法

火災を予防し、命、財産を保護するために設けられた法律が「消防法」です。

建築上の制限は用途によって様々ありますが、共同住宅に毎度関わるのが2方向避難です。

これは一定条件の共同住宅では、各戸から外に出られる避難経路を2つ以上設けなければならないという決まりです。

地上に出られるまでの経路、部屋から外へつながる階段までの距離にも定めがあり、火災が起きた際にどちらかの経路から避難できるように計画する必要があります。

共同住宅のように複数人が集まる場所では、1つの避難経路だけでは特定の場所に人が集まり逃げ遅れやけがのリスクが高まるためこの規定が設けられています。

⑧工作物の移動制限

所有する土地・物件の前に工作物(電柱など)があると、建築上邪魔になることがあります。

しかし、電柱の持ち主は、土地の所有者ではなくNTTや電力会社にあるため自由に移動することができません。

移動したい場合、電柱に記載のある情報を元に所有者へ連絡して電柱の移動ができるかどうか問い合わせをする必要があります。

場合によっては電柱の移動ができないこともあります。

⑨土地の形

土地の形状によって建築が難しい場合があります。このような土地を「変形地」と呼んでいます。

例えば、「敷地延長」の土地があげられます。

敷地延長とは、敷地の一部分が通路状になっている宅地のことです。

変形地は、地価が安く、税金も安価になりやすい分建物や外構へ予算を回すことができたり奥まった場所にあるため落ち着いた環境を作りやすいといったメリットがあります。

しかし、陽当たりに工夫が必要、駐車が難しい、通路が狭い場合大型車・重機が入れないなどデメリットがありデメリットを解決できる設計や建築工程が必要です。

変形地専門の建築会社があるほど難易度が高く変形地の土地活用には技術力や経験が欠かせません。

⑩条例

建築基準法、都道府県の条例の両方をクリアした建築計画だけが、建築許可を受けることができます。

1都三県では、東京都の都条例、神奈川県、埼玉県、千葉県の県条例とそれぞれ独自の条例があり土地に該当するものを確認する必要があります。

共同住宅建築で一番心血を注ぐのがこの地域条例の把握です。

同じ共同住宅ワンルーム向けの条例でも、都道府県、市や区によって「集合住宅を建てる方へ」と記載があったり「ワンルーム条例」と書いてあったりと記載の方法も様々、内容も様々です。

例えば、「9戸以上の住戸のあるワンルームでは〇〇㎡以上の床面積が必要」など戸数や広さに制限がかかっておりそれより小さいものは建築不可といったような制限がかかります。

建築力が賃貸経営成功には重要

今回は土地活用、建築の制限となるもの10項目を解説いたしました。

取り上げたもの以外にも細かな制限があり、誤って計画をした場合建築確認が通らず、間違ったまま建築を進めた場合違法建築となり融資や売却にも影響します。

土地活用の相談の際にお持ちの土地の住所を入力することがあるのは、このような法的制限を事前に確認し土地活用の可能性を調査するためです。

建築基準法は適宜改正されており、最新の法令に則った建築計画を作成したうえに、住む方の居住環境、需要のある間取りや設備を備えた住宅が賃貸経営成功へ導きます。

この記事を書いた人
賃貸知識BANK編集部
不動産市場や投資に関する情報を専門的な視点で解説しています。資産形成や投資戦略に役立つコンテンツを実務的な目線でお届けします。
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